新しい年が始まりました。今年もよろしくお願いいたします。
本年初の記事を執筆するにあたり、この連載を私が引き受けた「そもそもの理由」を振り返ってみました。けっして書くことが得意でもなく、語彙が豊富ともいえない自分が毎月記事を書き続けるということは、ちょっとした挑戦でしたし、多少の勇気がいりました。それでも引き受ける決断をしたのは、ある思いがあったからです。
それは、「違いを超えて人と人が手を取り合い、共に幸せな社会を創る」「まず自分が自分とつながり、良い関係を育むこと。そこから和は始まる」という思いでした。その思いを記事にし、読者の皆さんと和を創りたい。そんな願いで一歩踏み出したのが、本連載のはじまりです。
それから約3年。今月でなんと32回目の記事です。勇気をもって前へ進んだ自分がちょっぴり誇らしく、読み続けてくださる皆さんやこの場を提供してくださるプレマさんに感謝が込み上げてきます。今年も拙い文章ながら、思いと勇気をもってお届けしていきますので、よろしくお願いいたします。
自分との和
今回は、自分自身と良い関係性を育むことで、一歩踏み出せるようになった方の事例をご紹介します。Mさんは、これまで培ってきた経験やスキルをもっと人の役に立てたいという願いがありました。しかし、実現に向けて具体的に動こうとすると自信喪失に陥り足が止まってしまう。そんなパターンを3年ほど繰り返していたそうです。
さらに、「そろそろ動いたら?」と周囲から痛いところを突かれるたび、自分のなかの地雷が激しい怒りとなって「誰にもなにも言われたくない!」と我を忘れるほど頑なになってしまう。Mさんはそんな自分を無力だと感じていました。でも、どうしても一歩を踏み出したくて、勇気をもって相談に来てくれました。
Mさんの内面でなにが起きているのか紐解いていくと、そこにはとても興味深い事実が待っていました。なんとMさんの内面には、「前に進みたい自分」と「その足を引っ張る自分」という二人のMさんが存在し、せめぎ合っていたのです。まるでアクセルとブレーキを同時に踏んでいるような葛藤状態。前に進みたいのに進めない苛立ちと無力感は強い怒りとなり、Mさん自身に向けられ身動きがとれなくなっていることは明白でした。
すべて使えばいい
そのとき、こんな言葉が私の口から出てきました。「それは無力感であって、あなたは無力ではない」「無力感は力だ。無力感という力を使えばいい」。私の師エドウィンは、「すべてのエネルギーは使える」と教えてくれました。不快感ですら使える。使えないエネルギーなど存在しない、と。無力感というエネルギーがあるのなら、そのエネルギーは前進するために使えばいい。感じて使うんだ。声にすれば前に進める。そう教えてくれました。
最初は戸惑っていたMさんでしたが、無力感というエネルギーを身体で感じ声にして出してみました。すると、前に進みたい自分と足を引っ張っていた自分がいがみ合いを止め、互いを認め合い始めたのです。
チャレンジをすれば傷つくこともあります。だからこそ、足を引っ張ることで守ろうとしていた慎重な自分。傷ついたとしても挑戦したい果敢な自分。どちらの自分にも感謝ができたとき内なる葛藤の幕は引かれ、まわりを遠ざける怒りは収まっていました。
最近のMさんは積極的で、自分にできることをちょっぴりの勇気をもって楽しそうに試しています。周りもなんだか楽しそう。そんな姿は「和は自分との関係性から始まる」ことを改めて教えてくれました。