愛をこめて親から伝える
前回のコラムでは性の教育は、できるだけ小さなころからおこなうことをお勧めしました。それは子どもの身を守るためにも、社会的モラルの基礎を身につけるためにも大切なことですが、もうひとつ、親子間で性のことを日常のなかで話し合える「関係性」を築くためにも必要なことだからです。でも、実際にはほとんどの保護者さんが、子どもに家庭での性教育は必要はない、「自然と知っていくから」と思っておられるのではないでしょうか。でも、その「自然と」というものが、本当によい影響を与える情報なのかどうかわからないままインターネットに任せてしまうのは、ちょっと〝うかつ〟なことかもしれません。肝心なことは、やはり最も身近で信頼のおける、親から伝えられることのほうが、子どもの将来にとって幸せなことではないでしょうか。
思春期の性教育のポイント
幼いころから性教育をしてこなかったご家庭で、突然に親が性の話を説教しはじめると「面倒臭い」とウザがられてしまうかもしれません。そこで思春期の子どもへの性教育のポイントとステップをお伝えしたいと思います。
①「教え」ない。「伝える」心得を
②まずは先に親自身のことを話す
③子どもの今の状況を聞く(好きな人はいる?など)
④なにか提案があるときは、個人的な意見として伝える
⑤妊娠や結婚観について語り合う
生理の処理の方法や、避妊の方法・緊急避妊薬などについての手段等を教える、それだけが性教育ではありません。それでは、肝心な「愛」の部分が伝わらないじゃないですか?
まずは、思春期の子どもに対しては、大人同士の立場として尊重し、語り合える関係性が大切です。おそらく親として最も恥ずかしくてハードルが高いことが②「まずは、自分のことを話す」こと。これはつまり「恋バナ」です! お母さん、お父さんの恋愛話。出逢ったころどんなにか幸せだったのか。わが子を授かったときの話やそのときの複雑な気持ちを、伝えたことがありますか? たとえ、今はすっかり夫婦間の気持ちが冷めていたとしても!(笑)そのときに感じたトキメキや愛しい想いは嘘ではなかったのでは?
自分の恋愛話をするなんて、親の威厳が保てない!と思うのであれば、残念ですが、子どもも自分の本音は「親になんぞ絶対に話さない」と決めていることでしょう。
おめでたい日をチャンスに
親の恋愛経験は決して見本になるようなものではないことは、誰よりもご自身が一番理解していることではないでしょうか。これまでたくさんの間違いもあったでしょうし、傷ついたり、傷つけてしまったりしたこともあったでしょう。そんななかでも、たくさんの温かな幸せを見つけてきたこと。そのような背景から、あなたにはもっと幸せでいてほしいという想い、その願いを伝えるのにピッタリなタイミング。それは初潮を迎えた日、お誕生日、進級・進学、あるいは子どもに好きな人や彼氏・彼女ができたかな?という「おめでたい」日です。
思春期向けの性教育の本も活用しつつ、生理はなんのためにあるのか、どのように過ごしたらよいのか、人間の性交は、他の動物とどう違うのか、なぜ今はまだそれをしてほしくないと思うのか、もし避妊を理解させたいのであれば、どのような方法があるのか、なぜそれが必要だと思っているのか、あらかじめ夫婦で打ち合わせ(ひとり親ならご自身のなかで考えを整理して)伝えるタイミングを決めましょう。「もう大人の仲間入りだから」というスタンスで、おめでたいその日をきっかけに、愛情を込めて性愛について語ってみませんか。