累計122万件出荷!自然食品・自然療法・エコロジー・らくなちゅらる提案サイト

ながれるようにととのえる

身体の内なる声を味方につけて、生きる力をととのえる内科医、鍼灸をおこなう漢方医のお話

やくも診療所 院長・医師

石井恵美 (いしいえみ)

眼科医を経て内科医、鍼灸をおこなう漢方専門医。漢方や鍼灸、生活の工夫や養生で、生来持っている生きる力をととのえ、身体との内なる対話から心地よさを感じられる診療と診療所を都会のオアシスにすることを目指す。
やくも診療所/東京都港区南麻布4-13-7 4階

つながる縁、タカラモノ

投稿日:

先日、河瀨直美監督の映画『あいだにある幻』を観た。小児の臓器移植や死生観を問うこの作品に、一人の友人が出演していた。

彼は救急医を経て、現在は地域医療の在り方を模索し続けている。縁ある人が困っていれば、専門外であっても仲間のネットワークを即座につなげ、最適解を見出すために熱意を持って動く。そこには医師にありがちな余計なプライドや躊躇が一切ない。医師である前に一人の人間として信頼できる友だ。映画のなかの彼の言葉には、人として大切な「芯」が宿っており、自分の在り方を改めて見つめ直させられた。

彼とつながるきっかけをくれたのも、また信頼できる仲間だった。私が眼科から内科、そして漢方の道へ進もうと研修し直していたころに、一年間だけ彼女と共に働いた。

コロナ禍の最前線で奮闘していた彼女と、先日ようやく再会できた。人通りの多い街中で、大人が二人抱き合って喜ぶほど、再会は心底嬉しかった。共に患者さんのためになにができるかを必死に追い求めたあの若かりし日々を彼女と共有できたことは、神様が私にくれたご褒美だと思っている。

そんな信頼できる仲間たちの存在は、私の家族の危機においても大きな支えとなった。

数年前、父が闘病していたときのことだ。地元の病院は、私が医師であるという理由から、父への告知を私自身に求めてきた。娘として、医師として、どう伝えるべきか。心が壊れそうな苦境にあっても、私はかつての自分を守る作戦であった「淡々と平然とやり遂げる」姿勢をとり、父に事実を告げた。

取り乱すことのない父の姿に、私はより一層の痛みを感じた。父が取り乱してくれたなら、私もまた医師ではなく「ただの娘」として泣くことができたのかもしれない。あのとき、歯を食いしばった記憶は今も鮮明に残っている。

その後、先輩の尽力で大学病院に受け入れてもらったが、主治医となった消化器内科の医師は、技術は優秀でも、死を目前にした患者や家族に寄り添うことはなかった。病室に来ることさえままならない主治医の態度に、家族の苦悩は極限に達していた。私は主治医に時間を取ってもらい、家族がいかに困惑し、苦しんでいるかという事実を伝えた。

その直後、患者本人である父が口にした言葉に私は言葉を失った。
「先生も、大変なんだよ」

父は自分の苦しみよりも、主治医の苦悩に心を向けていたのだ。

父は、傍若無人な身内に翻弄され続けた人生を送った。自分の葛藤を内に秘め、なんとか折り合いをつけて生きてきたのだろう。その優しさはあまりに深かったが、同時に自分への優しさはいつも後回しになっていたのではないか。父の言葉を思い出すたび、私は優しさの本質について深く考えさせられる。

 

孤独を救うのは
志を同じくする存在

父の死後、看護師さんたちが私にこう言ってくれた。「主治医に家族の思いを伝えてくれて、ありがとうございました」と。医師としての腕はもちろん大切だ。しかし、人間として大切なものを持ち合わせていなければ、患者も家族も病院で孤独に置き去りにされてしまう。看護師さんたちはそのことを痛いほどわかっていたのだ。

診療の場において、私一人では対処できないこともある。しかし、そんなときに志を同じくする仲間がいてくれるだけで、それは大きな力になる。大事なものを共有できる存在は、人生における至極のタカラモノだ。

人との縁は自然の揺らぎのようなものだと思う。「去る者は追わず、来る者は拒まず」とは言い得て妙だ。春という変化の季節に、つながる縁も、あるいは形を変えていく縁も、すべてを面白がって楽しんでいたい。

- ながれるようにととのえる - 2026年5月発刊 vol.224 -, ,

今月の記事

びんちょうたんコム

累計122万件出荷!自然食品、健康食品、スキンケア、エコロジー雑貨、健康雑貨などのほんもの商品を取りそろえております。

びんちょうたんコム 通販サイトへ