りんごを丸ごと使い、砂糖は一切不使用。
有機のスパークリングジュース、アップルサイダービネガー、シードルを生産するフランスの老舗果樹園コトー・ナンテ社。
とても元気なオッセル社長に、果樹園の歴史を中心にお話を伺いました。
1943年ジャック・モローとルネ・デルオモーの2人がりんご栽培の果樹園として2ヘクタールの農地からスタートしたのがコトー・ナンテ社の始まりです。当時の農法では、りんご栽培には10日おきに薬品処理を含む化学処理を施しており、ジャックもルネも心を痛めていました。そのような環境でオーガニックの概念に魅せられた2人は、試行錯誤を繰り返しながら1970年ついに有機栽培に切り替えます。
しかし、最初の年は、なんと、果実の80%が販売できませんでした。それでも、2人は諦めませんでした。フランス最古のオーガニックりんご果樹園も始まりは厳しいものだったのです。
この状況を乗り越えるには、まず、傷がついたりんごをムダにしない工夫が必要でした。翌年には、ジュースを製造することにしましたが、今度は製造知識が不足していて、5本中1本が破損してしまうという状況でしたが、徐々に収穫したりんごをムダにしないサイクルができ始めました。そして、私が社長に就任する3年前の1995年には、人智学者ルドルフ・シュタイナーが提唱するバイオダイナミック農法の果樹園へ。さらに自然との関わりが深い果樹園へと進化したのです。
身体を壊したときアップルサイダービネガーに助けられる
フランス人でありながら、仕事に熱中している完全なビジネスマンだった私は、身体を壊したことをきっかけに、仕事だけではなく、新しい生き方を模索し始めました。自分の身体のために、フランスの伝統的な健康法であるアップルサイダービネガーのお世話にもなりました。
そして、自然、倫理、環境に深く根ざしたわくわくする仕事を、ここコトーナンテ社で発見し、今では44種類のりんごに、1 0 0 ヘクタール近い果樹園とともに、すっかり元気に毎日を楽しんでいます。
コトー・ナンテ社では、栄養価の高いフルーツの皮を剥かずに、そのまま使用しています。例えば、アップルサイダービネガーは、りんごを丸ごと使い、水や砂糖は一切使わない伝統的製法で作っています。そのため、他のアップルビネガーよりもほんの少し酸味が強く仕上がっています。
規制上、少なくとも5%の酢酸を含む必要があるため、これを達成するため、コトー・ナンテ社では、樽に樫の木を用い、この中で熟成させるという、繊細な方法で時間をかけてアップルサイダービネガーを生産しています。また、酵素を加えずに、樫の樽で数週間熟成させます。これにより、樫の風味をほのかに含み、自然の芳醇さをミネラルにたっぷり含んだアップルサイダービネガーが完成するのです。
私は、毎朝、これを大さじ2杯程度、少量の蜂蜜とお湯で割って飲んでいます。ときには、レモンジュース、生姜、シナモンとカイエンペッパーとハチミツで作るデトックスレシピとして楽しみます。また、寒い時期にはホットティーと蜂蜜とシナモンでつくるお茶レシピ、ガーリックと合わせるレシピ、コンブチャとあわせるレシピをよく活用しています。
フランス北西部の地方都市ナント近郊に拡大してきた農園の総面積は、現在、100ヘクタール近く。フランスを代表するオーガニックフルーツブランドに成長しました。ナントは、とても美しいところです。日本のみなさんも、ぜひ遊びにきてください。