家にいながら森林浴をしているかのように爽やかな風を感じられる空気清浄機があります。20代から健康機器の研究・開発に取り組み、数々の特許商品を発明してきた株式会社MHCの田中廣治会長に、健康長寿の実現にかける思いについてお話しいただきました。
御年82歳で現役の研究者。全国各地で講演し、病気になる前に空気の質が健康にもたらす影響に気づいてほしいと話す
私の父と母は、若いうちに癌で亡くなりました。それで親孝行するには、人が健康で長生きできるものを発明しなくてはと思ったんです。21歳で勤めていた工業会社を辞めて独立しました。
私は子どものころから物理に興味がありました。ラジオやおもちゃの車などを壊しては組み立てて遊び、ものが動く原理を知ることが好きでした。人間も植物も世の中すべての物質は電子で動いていることを知ってからは、人の健康にも電子が密接に関わっているのではないかと考え、研究してきたんです。
でも、研究にも発明にもお金がかかります。その資金を得るために、特許を取ろうと思いつきます。最初に発明したのが、お弁当や寿司の仕切りに使われる「バラン」、それからプラスチック製のゴマすり器。ありがたいことに大ヒットしたので、マイナスイオンの商品開発に専念することができました。
マイナスイオンの正式名は「負」の電子。電気を帯びている微粒子のことです。プラスの電気を帯びているプラスイオンと共に、大気中に無数にあり浮遊しています。そのバランスは、場所や地形、天候や湿度などによって変化します。イオンの性質として、プラスイオンには酸化作用が、マイナスイオンには還元作用があります。よく森林浴が健康によいといわれますが、森のなかにマイナスイオンが満ちているからです。マイナスイオンは人をリラックスさせ、疲労を取り除いてリフレッシュさせてくれます。その還元作用を生かして、家の中を森林浴をしているかのような気持ちいい空気で満たすにはどうしたらいいかと考えていました。
あるとき、宮崎県の高千穂にある祖母山におもしろい岩石があると耳にしました。地元では昔から漬物石に使われていて、健康にいいと言い伝えられている。シックハウスで問題になった家の床やクロスの接着剤にその石の粉を混ぜたら症状が出なくなったというのです。空気中のクラスターが石のエネルギーを写し取って、アレルギーの問題が解決したんだなと考えました。さっそくその石をもらってきて、すでに開発していたマイナスイオン発生器と組み合わせてみたら、煙草のニコチン臭がぱっと消えたのです。それは驚きました。
寝ているときにアイデアがひらめく。今も新しい商品の開発中
さらに研究を重ねて、独自のセラミックを開発すると効果が何十倍にもなりました。この風を枯れかけた観葉植物に当てると1週間で元気になり、瓶の水に当てたら水が腐らない。セラミックとマイナスイオンの組み合わせで、なにか生き物を活性するものを発しているんです。私はそれに「蘇生イオンRエネルギー」と名づけました。商品化に向けて、北里大学で空気清浄機のウイルス除去効果の性能試験をおこなっている北里研究所メディカルセンターに製品を持ち込み、共同で除菌効果の実験と検証をおこないました。1年半かけて、インフルエンザウイルスA型の試験で99・9%除去するという性能を実現。それで完成したのが、空気清浄機「スーパークリーン1番」です。その後、廉価版の「新林の滝」も発売すると、口コミであっという間に10万台が売れました。これは扇風機のような形ですが、部屋の空気を活性するものとして夏だけでなく一年中使えます。農業にも応用され、平成17年には東久邇宮記念ノーベル発明賞をいただきました。
石ってすごいんですよ。鉱石は地球という星の一部。私は、宇宙からの贈り物だと思っています。なぜ蘇生イオンRが健康に役立つのかというしくみを説明するには、今の科学的根拠では限界があります。それをもっと解明してみなさんにお伝えしてくために、最近、蘇生研究会を立ち上げました。学者と一緒に共同研究を進めながら、全国で講演活動もしています。
我々は1年間で約946万回も呼吸していますが、世界中でこれだけ経済活動が発展した今、大気汚染が深刻です。CO2削減をめざすことはもちろん大事ですが、30年とか50年先の話です。食べるものや運動することだけでなく、今吸っている空気の質が健康に影響を与えていることにもっと目を向けてほしいと思います。
私は癌系の家系にあって、82歳でもピンピンしています。ゴルフでは40代の人に負けないぐらい球を飛ばして驚かれるんですよ。人の体や細胞を若く保つこと、病気を防ぐことについては、まだわかっていないことも多いですが、免疫細胞が最大限に働くような体づくりをして健康を保つこと。それが僕の健康法であり研究です。
かつて「浪速の発明王」なんて言われましたが、研究や発明は失敗して当たり前。50個考えて製品化しても一つ当たればいいほうです。だから全部が全部失敗する覚悟で取り組んできました。だから成功したときは本当に嬉しい。これまでにお客さんから感謝の手紙が何百何千と届きました。医療施設や福祉施設、飲食店でもどんどん使っていただいています。これからは健康長寿の研究をするきっかけになった、癌にならない研究に取り組みたい。それで人生をまっとうできたら幸せです。