春、旅立ちの時。子育てが終わる

19歳になった次男が、今年の夏、アメリカへ旅立ちます。大好きな映画作りの夢を掲げてシカゴの大学でシネマアートを学ぶために。長男も３年前に一足先にアメリカへ留学し、やはり同じ夢を抱きながら、大学で日々映画制作に取り組んでいるところです。
蛙の子は蛙？
血というものは面白いですね。けれどこの肉体の記憶ＤＮＡをも超えて、魂に刻まれた記憶によっても、私たちは生かされています。子どもたちは今世どんな約束を神様として生まれてきたのだろう。そこでまたなぜ、私を母親として選んで生まれてきたのだろう。そんなことを思う毎日です。 まだ卒業を迎える数ヶ月前のことでした。志望校へ提出するためのポートフォリオ制作のために、日々ドローイングに励む次男は、肩こりが激しく頭痛が慢性化するほどでした。クリニックでの診断は緊張型頭痛。薬による治療を聞くと、軽く精神安定剤が処方されると聞いて、慌てて「自力で治します！」と言って逃げ帰ってきました。それからというもの、我が家ではお風呂上りにアロママッサージと靈氣でスキンシップをとるようになりました。

突然語りかけてきた息子の魂

ある晩、いつものように息子のコリコリの肩をリラクセーションを促す精油でマッサージを始めました。本人は嬉しそうに照れ臭そうに、「ひ～！
いてて、いてて」と身をよじりながら、コリがほぐれていく悶絶を喜んでいるようでした。
そんな息子の反応をよそに、私の意識は彼の内部に集中していき、肩の深部を見ながら、命の核に触れたような感覚がしました。すると、私の中で何かが起こりました。彼の肩をマッサージしながら、この子に対する感謝の気持ちが溢れてきたのです。
その瞬間、息子の魂が直接語りかけてきました。「マミーもう卒業だよ！
僕はあなたに全てを教え終わりました。もう僕が教えることはありません。『美しい地球の未来を担う子どもたちのために』そう願い続けてきたあなたの思いは、ようやく機が熟されたのです。さあ、もう躊躇うことなく始めてください。僕は僕の道を進んで行きます。さあ、これからだよ」
マッサージをしながら、私は彼の背後から深く深く頭を垂れました。私が彼を育ててきたわけでも、導いてきたわけでもありません。この子が私を導き、教え、指導してくれていたのだと、深い魂のレベルから、この出会いの意味を理解し、今ようやく魂同士の約束を果たし終えたのです。そして、彼が生まれてから今までの19年間が走馬灯のように思い出されました。
注意欠陥多動障害、学習障害というレッテルを貼られたのは小学校へ上がって間もないころでした。それ以来、プロによる適切な指導と周りからの温かい理解と支援により、彼は二次的三次的障害を無駄に上塗りすることなくのびのびと成長することができました。
そして、私は彼の在るがままを丸ごと愛してきました。これは障害ではない、神に与えられたギフトなのだから、と。実際私はそんな息子に寄り添ってきて、見栄でも強がりでもなく、本当にそう思うのです。他の人にはないマグマのような火の玉を持たされている。超人的な集中力と創造力は、持て余すと火の粉を周囲に撒き散らす。そのパワーのガス抜きというか、放出手段を私は与え続けてきました。その一つが映画でした。その情熱の赴くままにとことん投資しました。そしてこの春、彼は夢の入り口に立ったのです。
「産んでよかった！きてくれて本当にありがとうございます。紛れもなく、あなたは私の大いなる師です。私を本質へと誘ってくれた師でございます」。
何の前触れもなく、堰を切ったように溢れ出てきた大粒の気づきの涙は、彼には気づかれていません。相変わらず、「いてて、いてて、そこそこ〜」と雄叫びをあげる息子。肉体のコミュニケーションと魂のコミュニケーションのギャップに思わず笑ってしまいました。