「発達障害の息子さんをよく一人で留学させられましたね。心配じゃなかったんですか?」と聞かれることがあります。たしかに、もしまだ起こってもいない未来をあーだこーだと心配していたら、際限なくネガティブな想像が膨れ上がっていたことでしょう。
当然ながら母親としてまったく心配がなかったわけではありません。しかし人の意識はエネルギーであり、現実をクリエイトしてしまう力があることを私は重々承知していたので、マイナスな思考は浮かべないようにしていました。
イメージに責任をもつ
人のもつ〝意識の力〟を思い知ったのは、長男が生まれて半年が経ったころ、カリフォルニアに住んでいたときのことです。昼間ベビーベッドでは寝てくれなかった長男を、夫婦が使っていた高さ80センチほどあるマスターベッドの中央に寝かせていました。寝返りをうてるようになったものの、まだハイハイはしていなかったので、念のために寝ている息子を囲むように大きなクッションで土手を作り、大きなブランケットをかけておきました。その間ちゃちゃっと家事をこなし、長男を寝かしつけた部屋のすぐわきのバックヤードで、布おむつを干していました。
そのときです。ふと直感的に「あ、起きた!」と思ったのです。そして私の脳内イメージでビジョンが進み、息子がベッドの端へ向かってハイハイしていき、ストーンと頭から真っ逆さまに床に落ちる! というビジョンが見えたのです。イメージの延長線上では大変なことになります。私は焦り、とっさにテープを巻き戻すかのように、再び息子が目を覚ました場面からビジョンをプレーバックし始めました。そして息子は同じようにハイハイしてベッドの端まで行くのですが、今度は身体に大きなブランケットが絡みつき、ベッドから落ちるときにはまるでキャンディーのようにくるまれて、ブランケットに守られた状態で床に落ちる、というビジョンができあがりました。
その瞬間、ドーンという鈍い音が部屋から聞こえ、すぐにギャーという泣き声が聞こえたのです。私は慌てて部屋へ行き息子を探すのですが、カリフォルニアの強い日差しを受けた目は、急に室内に入ると真っ暗でなにも見えず、私はパニックで心臓をバフバフさせながら「こうき!こうき!」と大きなベッドの上を手探りで探しました。けれどいません。寝ているはずの息子はベッドの上にいなかったのです。「まさか!?」と思い、ベッド脇の床の上を見ると、さっき私が思い描き直したビジョン通りに、キャンディーのようにブランケットにくるまった息子が床に落ちていたのです。私は慌ててブランケットをほどき、「ごめんね、ごめんね」と言いながら、息子が泣き止むまで抱きしめていました。
そのとき、私はとても厳しい内なる声を聞いたのです。「自分のイメージに責任をもて!!」この出来事は、私に意識というものが現実をクリエイトしてしまう強力なパワーを持つことを知らしめる体験でした。
それ以来、日常の些細なことでも、無意識的にイメージしていることが他者や環境に影響を与えているということを自覚して、思考がネガティブに走ったときは瞬時にポジティブに書き換える、という習慣がついたのです。
その十年後くらいにヒプノセラピーを学んで、私が無意識に修得したこのイメージの書き換えの方法が、退行療法という潜在意識を書き換える手法とまったく同じであることに驚きました。
人は〝意識の力〟をもち、イメージは現実を創り出します。であるのならば、子育てにおいてもそれは大いに前向きに活用する必要があるわけです。子どもを思う親の愛情は計り知れず莫大です。それゆえに、母親・父親の意識ほど子どもの人生に影響を与えるエネルギーはないと思うのです。