以前、あるお母様から息子さんについてのご相談を受けました。18歳になる息子さんは、大学入学早々に進路の選択を誤ったと後悔し、大学に馴染めず下宿先に引きこもり、連絡してもなかなか返信が返ってこないので心配で仕方がない、というのです。お話を聞きながら、お母様の思いつめた顔を見る限り、息子さんはかなり深刻な状態だなと、私はそう感じていました。
　
それから一カ月後、夏休みで帰省している息子さんのセッションをすることになりました。彼の顔を見た瞬間、私はこの目を疑いました。息子さんの存在からかもし出されるエネルギーは清々しく聡明でクリアで、魂はピカピカに輝いていたからです。
　
私はそのとき、なるほどと納得しました。お母様が語る息子さんは、お母様の脳内で作り出された息子さんであり、息子さん自身ではないのだと。お母様が息子さんに投影していたあの暗闇は、お母様ご自身のものなのだと。お母様の過去のトラウマ、ネガティブな記憶から投影された世界。お母様の主観的思考から色眼鏡を通して映し出された世界に過ぎなかったのです。
　
息子さんはとてもしっかりしていました。親の理想とする大学に入ったものの、それは本当に自分がやりたいことではなかったと。親と距離を置くことで、〝こうあらねばならない〟という呪縛のような期待から解放されたようでした。

子どもが解放されるとき

似たようなケースで、なかには主体を完全に他者に奪われ、自分がなにを望んでいるのか、なにが好みなのかすらわからなくなってしまっているお子さんもいます。
　
18歳ともなると、親の影響下から徐々に抜け出していける年齢です。その気になれば自力で働いて生きていくことだってできるのです。時として私は、お子さんに直接、「自分の頭で考えて、自分で選択して、自分で生きていくことだってできるんだよ」ということを伝えて、あえて自立心を刺激することもあります。するとほとんどの子どもは、ハッとしたかのように目を輝かせます。そんな発想がそれまでなかったわけですから。「抜け出てもいいんだ！」という許可をもらった気持ちになれるのではないでしょうか。すると内側に閉じ込められていたインナーチャイルドが無邪気さを取り戻し、本来の生きる力と創造力が蘇ってきます。

親として気をつけるべきこと

親の意識は目に見えずともエネルギーとして、子どもの思考や感情、創造力や生き方そのものにも影響を与えるものです。私たち親は、子どもの心配をするのが常です。だからこそいつも自分自身の思考をチェックしていなければいけないと思うのです。
　
自分の子どもに対して良かれと思ってやっていることが、本当に子どものためになっているかどうか。それは子どもをコントロールするものではなく、子どものもつ本来の力と可能性を伸ばしてあげるエネルギーになっているかどうか。もしそれがネガティブなものであるのなら、それがどこからきているのか、自分自身を内省する必要があります。親である私たちもまた、自分の親から信じ込まされてきた〝思い込み〟というものでがんじがらめになっていることがあるからです。
　
その無意識からくる連鎖にまず気づき、信じられる自分を回復させることです。自己の本質と深くつながって、他者目線で自分を認識するのではなく、自分で自分を認められるよう自尊心を取り戻すことです。自分を愛して魂を開花させながら、主体性をもって〝生きる〟ことができてはじめて、子どもの存在を丸ごと尊重できるのですから。
　
私は子どもたちを育てさせていただいて、子どもたちに磨かれました。それは私自身の癒しのプロセスだったと思います。