2014年、私はミャンマーを何度も訪問していました。当時のミャンマーは2010年の総選挙で軍事政権が正式に解散、さらに民主化が進んでいる最中でしたので、ミャンマーのオーガニック関係の私企業や、国際NGOとの関係を深めるために何度も行きました。民主化に向かうミャンマーの持続可能な発展をお手伝いできれば、という思いがあったからです。そんな明るい未来が感じられる空気感のなかで、日本から養蜂指導に来ていた藤井さんにヤンゴンでお会いしたことが、高品質で極めて味の良いミャンマー産のはちみつを弊社のお客様にご紹介するきっかけになりました。
ミャンマーの山間地は農薬汚染がほとんど進んでいない、養蜂にとって極めて貴重な地域です。しかし、国境を接する中国から安価で危険性の高い農薬が大量に持ち込まれ、農薬を使うといかに楽に農業ができるのかをミャンマーの農民たちが急速に知り始めたころでした。とにかくいち早く安全なはちみつを買い上げることで、山間地の農薬汚染を防ぐ必要がありました。農民が農薬を買えば中国商人にお金を払う必要がありますが、美しい蜜源を保持し、養蜂が地域の持続可能性を高めれば、農薬を買う必要がなくなります。養蜂の専門家である藤井さんはそのことをリアルに知る第一人者ですし、私はこのような事実を伝えて売ることを専門にしていますので、すぐに意気投合したのです。
その約2年後、私はジェラート作りをスタートし、ジェラートの甘味付けにこのひまわりはちみつを使ったところ、店の開店から1年経たずして、ジェラートコンテストで入賞することができました。その重要な要素がこの日本人に親しみやすいミャンマー産のひまわりはちみつだったのです。
私の知り合いに京都で有名な漢方(中医学)の医師がいます。以前、この先生が漢方薬とセットで飲むべき清浄なはちみつを探していることを知り、早速、先生にこのはちみつを持っていきました。先生は主にOリングテストで患者さんと薬の相性を確認し、処方を決定されるのですが、このはちみつはほとんどの患者さんに強い適合の反応を示します。先生が弊社のミャンマー産はちみつを患者さんに処方されるようになって10年近く経ちますが、先生を受診した弊社のお客様や私の知り合い、私の家族までが「ひまわりはちみつ」と漢方薬のセットで飲むように指導を受けて帰ってきますので、「そのはちみつなら、うちの会社にドラム缶何本もあるけどな」と言って笑うのが定番になりました。それほどまでに先生から信頼され、患者さんにお勧めしていただいています。1年ほど前、先生から「ミャンマーの軍政がとんでもないことをしているという報道を見たけど、はちみつの入手は大丈夫か?」と問い合わせを受けました。私は以下の通りの返事をお送りしました。
いつもありがとうございます。このはちみつは、現在命がけで養蜂され、採取されています。中国を背後に据えた軍政が支配している状態で、とくに最近は軍の支配が養蜂地域にも及んでいると聞いています。軍政側の養蜂家であれば、弊社は取扱を速やかにやめたことでしょう。決して大声では言えないことですが、養蜂家たちは民主派の武器を持たない市民であり、彼らを支えるためにも、なんとかこのはちみつを買い支えるのが私の仕事と思って取り組んでいます。
しかしながら、この数ヶ月は養蜂地域の戦闘も激しくなっており、いつ、本養蜂のエリアもどうなるかわからない状況です。とても厳しい状況で、彼らの命も含め心配しているところです。
また、貿易についても軍が邪魔をし始めており、船荷が順調に積まれるかどうかも、日々刻々、状況が変わっています。先生がどのようにお考えになるかはわかりませんが、私はこのような人々の命の危機がある状況において、志のある人たちが生活できる糧を買い支えることは、どんなことより大事なことであると考えています。