父が月へ還った日
「○時○分、死亡確認とさせて頂きます。」
父が検査と簡単な手術の為に入院した病院で、突然ドクターの口から聞かされた言葉。
この言葉からさかのぼること10日前。
数週間前から、軽い運動をすると動悸と息切れがするという父を心配し、母が検査に行くよう勧めました。そして検査の結果、心臓へ血液を送る管が少し詰まっているのでカテーテルでお掃除をしましょうと言われ、入院しました。
「お掃除をする」その程度のことだったのです。
それが、手術当日、血栓が飛び、心臓へ血液を送る管はほとんど機能しない状態。
緊急手術が行われましたが、手術から10日後、父は大好きな月へと還っていきました。
まさか父が旅立つなど1%も思っていなかった私たち……
「え? 何? 何が起こったの?」
「そんな重症じゃなかったよね?」
「2週間前はあんなに元気だったのに」
「会社どうしよう……家族どうしたら……」
人生は、何が起こるかわからないと言いますが、まさかこんな大きな人生の転換期を迎えることになるとは、思ってもみませんでした。
甘えん坊女子 →新米社長
父が月へ還ってから2カ月後、父の会社をどうするかという話になりました。
話し合いが進む中、何を思ったのか突然「私が継ぎます!!」という言葉が私の口から……
その後、あれよあれよという間に私の社長就任が決まったのです。
私は以前、研修の講師をしており、ご依頼を受けた企業様に出向くことがほとんどだった為、全国各地を飛び回る生活をしていました。
ですから、父の仕事にもまったく関わっていないし、「月のテンポって何?」という状態。
研修の講師というとしっかりしているように思われますが、実際は妹パワー全開の甘えん坊。
起業する知人が多かった中、自分は絶対に社長にはむいていないと思っていました。
なのに……
言ってしまったのです。「私が継ぎます!」と。
未だに、あの時なぜあんなことを言ったのかわかりません。
あの頃は色々なことに必死で覚えていないことが多いのですが、何かに導かれるような……
そんな感覚でした。
「焦り」「プレッシャー」「いらだち」 →「覚悟」
私は以前の仕事を「天職」だと感じていました。
厳しい仕事でしたが、心から楽しんでいたからです。
経験を重ね、それなりのポジションを与えられ、これからもっと!!
と思っていた矢先の退職でした。
その喪失感というのか、前職への執着というのか……
しばらくは新しい仕事に集中できない日が続き、焦りとプレッシャーでいらだつ毎日。
家族を養う為にも、売上を上げなくちゃ!
社長としてしっかりした所を見せなくちゃ!
何で思ったようにいかないの!
何でもっと頑張れないの!
私、とにかく頑張らないといけないのに!!
夜はなかなか眠れず、身体は鉛のように重い。
そんな生活が1年ほど続いたのです。
本当のことを言えば、社長を辞めることもできました。
周りは私の気持ちを尊重してくれていましたから、本気で私が以前の仕事に戻りたいと言えば、そうできたかもしれません。
でも、私、言いませんでした。
正直、前職に後ろ髪ひかれていました。
グイグイひかれていました。
でも、私が突然「私が継ぎます!」と言ったからには、そして実際に仕事を始めたからには、必ずそこには理由があるのです。
自分が思いもしなかった人生のストーリーがこの先に待っているのです。
「自分に負けたくない」という私の性格上、途中で引き返すことなどできない。
こうなったら、前職と同等……いや、それ以上の天職にしてやる!!
と覚悟を決めたのです。
次回へ続く
片岡 由季
片岡 由季氏 武蔵野短期大学にて国際教養学科および秘書コースに在籍。 その後、玉川大学英米文学科に編入。 前職はNPO法人日本ケアフィットサービス協会にて「サービス介助士」の育成に携わり、全国の企業研修を担当。 2010年4月より父である片岡慎介氏の後を継ぎ有限会社ビュージックの代表取締役となる。 現在は、断食道場やサロンなどで「月のお話会」を行い、「なりたい自分」「輝く自分」になる為の月のテンポ活用法をお伝えしている。 |
ゼッテン・116 高周波をスピーカーから発信し、付属の可聴音CD(テンポ116の音楽)を流すことで潜在能力の活性化を図ります。 |