【Vol.79】出逢いの季節に寄せて

ツキを呼ぶ出逢い
　今月も目を止めてくださり、ありがとうございます。この原稿をお届けする頃には、春のワクワク感を満喫されているのではないでしょうか。
　春といえば、“新しい出逢い”というイメージがあります。その日の出逢いによって、一日がとても幸せな気持ちになったり、人生が変わったりすることってありますよね。先日主人がとても素敵な出逢いをしたので、今回はそのお話をさせて頂きますね。

　主人は月に1度、九州、沖縄方面へ出張をします。今回の出張先は熊本。お取引先との打ち合わせを終え夕飯に選んだ場所は、以前熊本へ出張した際に見つけた美味しいと噂のラーメン店。そこは、小学校の時に使っていたような椅子が置いてある昔懐かしい雰囲気で、お味は抜群。
　美味しいラーメンを頂きながら一日を振り返っていたその時、ある事に気がつき呆然とします。なんと、お財布をホテルの部屋に忘れてきたのです。ラーメンも終盤にさしかかっているというのに、お財布がない。青白くなりながらも、恐る恐る店長らしき男性に話しかける主人。
　「お父さん。ごめんなさい。私、お財布を忘れてきてしまいました。携帯をここへ置いておくので、取りに戻ってもいいですか？」すると店長さんは「いいよ、いいよ。気にしないで！　ラーメン美味しかった？」と笑って聞いてきたそうです。「はい！　とても美味しかったです」と主人が答えると、嬉しそうに「そうか！　それならいいんだ。またおいで」。そう言ったのです。その店長さんの対応に驚きつつも、「お父さん。でも、私東京から来ているんです。次に来るのはいつになるか分からないし、○○ホテルなのですぐそこですから、取りに行ってきます」。といってお店を後にしました。

涙のチャーハン
　数分後、急いでお財布を取ってお店に戻ってきた時、温かく迎えてくれた店長さん。ふと気がつくと、先ほどいた若い店員さんの姿が見当たらない。どうしたのかと不思議に思っていると、その店員さんが少し経って戻ってきました。店長さんと店員さんの話しをよく聞いていたところ、どうやら主人にお店まで戻ってくる手間をかけさせないよう、店員さんがホテルまで取りに来てくれたようなのです。
　すれ違ってしまったけれど、ホテルまで行ってくれた店員さんに、それはそれは美味しそうな“まかない”を用意していた店長さん。その姿を見て、主人は猛烈に感動。「お父さん。チャーハンください」。そう言って、ラーメンを完食した直後にも関わらず、チャーハンを注文する主人（笑）。そのチャーハンの味は、本当に本当に美味しくて、一生忘れない味だと言っていました。もちろん、チャーハンも嬉し涙を流しながら完食。

　いやはや、すごい店長さんですよね。「お財布を持ってない」と言ったら、嫌な顔をされるか、人によっては通報されるか？　ですよね？　それを、「美味しかったならいいんだ！」と笑って言える人って、なかなかいないと思うのです。決して目立つ店構えではないようですが、このお店が人気店として長く続いているのも、納得です。
　いつか家族でこのお店にお礼を伝えに行こう。そう、主人と話しています。

片岡　由季

片岡由季氏
武蔵野短期大学にて国際教養学科および秘書コースに在籍。
その後、玉川大学英米文学科に編入。
前職はNPO法人日本ケアフィットサービス協会にて「サービス介助士」の育成に携わり、全国の企業研修を担当。
2010年4月より父である片岡慎介氏の後を継ぎ有限会社ビュージックの代表取締役となる。
現在は、断食道場やサロンなどで「月のお話会」を行い、「なりたい自分」「輝く自分」になる為の月のテンポ活用法をお伝えしている。