本誌はガリ版印刷だった創刊号から幾度となくリニューアルを続けてきました。毎月お読みいただいている方はお感じかと思いますが、今年4月号からは毎月のように変化し、編集会議を重ねて試行錯誤を続けています。新しい連載も続々スタートしており、特に新しいチャレンジをされている医師の連載を増やしています。私は常々、正解は一つではないと考えています。対立する2つの概念があった場合、あれかこれかではなく、必ず第三極があるはずだ、ということを口癖のように話し続けていますが、正解と間違いという前提で組み立てられた現代日本の教育を受けた人にはなかなか難しい概念でもあります。社内で「これは、プレマ的でない」とか「これは、らくなちゅらるという概念に合わない」などという言葉が聞こえるたびに、『そんなものは、そもそも存在しない。いいとか悪いとか、正しいとか間違っているじゃなくて、ミッションに照らしてもっと多様性を創り出す過程こそが大事』と話しています。私たちは浅く思考するとき、どうしても白黒をつけたくなり、比較したくなり、点数をつけたくなるわけですが、ここから抜け出したときにこそ、新しい概念に彩られた美しく感動に溢れた毎日を過ごすことができるようになります。本誌の記事から、また新たな気づきを得ていただけるよう、今月から一回り小さなサイズにしてみました。より持ち運びやすく、親しんでいただけるようにと考えた結果です。ご愛読いただけると嬉しいです。
連想ゲーム
リニューアル後は、毎号テーマを設定するようになりました。テーマは二十四節気の暦を開きながら、私が直感的に感じた言葉を発して決めています。どうしてそんな変わったテーマになっているのかという声もいただいているのですが、真相はこの通りなのです。私の頭の中では常に連想ゲームが起きていて、聞いている人はときに訳が分からなくなってしまい、混乱させることがあります。ストレートに問題に向かい合うと、やはり私も白黒で判断しそうになりますので、それを回避するためにこのような癖がついているようです。たとえば、「ガンは切った方がいい」「いや、ガンは切ったらおしまいだ」とか「にがりはミネラルの宝庫で有益である」「いや、にがりは灰汁であって、毒にしかならない」という全く違う考え方に迷うことがあります。どちらが正しいのかジャッジしようとすると、結局どちらにも異論があり、答えが出てこないような話が溢れています。お客様からの問い合わせでも、「あなたの会社はこう書いているが、別のところでそれは間違っていると聞かされた、どちらが正しいのかハッキリ教えてください」とのことで、スタッフが大いに混乱することがあります。このようなときに私は、「あれかこれかは、立場によっても利害によっても全く違うはずだから、その迷宮に入り込む前に、お客様がほんとうに何を望んでいるのか、深く聞く方が先なんじゃない?」とアドバイスします。自説を絶対と思って謝罪を求めておられる方も一定数あることは間違いありませんが、その大半は、よくよく話しを聞いてみると、ほんとうに望んでおられるのは、(表面的に)求められている答えとは、全く違うことだった、ということがよくあります。そして、聞いているうちに新しい答えがお客様から自ら出てきたりもします。そのヒアリングに役立つのが連想ゲームです。直接的に、目の前に出てきた言葉に反応せず、そういえば、○○ですがと話題を広げます。合気道の創始者、植芝盛平先生の動きを記録映画で見ていますと、相手の気が向かっている方向をさっと読み取り、対立しない方向に相手の動きを自身を中心にして円運動に巻き込みます。合氣道は愛氣道であり、決して戦わない武道であるという真意はここにあり、力と力がぶつかり合い対する第三極のあり方なのです。
受け取る勇気
面白いことに、正面から戦わずにいますと、天からギフトが降ってきます。正面から突破して論破を試み、議論が極限まで行き着くと、やはり天から贈りものが届きます。つまり、最初から△(三角)を見いだそうと努力する、または本気の↓↑(激突)を試みつつもお互いが謙虚であると、扉が開くのです。これは日本人の好きな折衷案というのとはまた違い、意識的に力が衝突しないように意識しても、または虚心坦懐に言葉をぶつけても、謙虚でありさえすれば必ず当事者に気づきがある、ということを意味します。欧米人は言語の成り立ちからいって論理的な人が多いので、これを意識して使える人が多くいます。激論を交わしているようで、実はお互いに理解を試みていた、という状態です。日本語には「折り合い」という言葉がありますが、折り合って妥協しているのと違う状態です。
これは我慢の調整ではなく、気づきの響き合いなのです。私は考えが常に変わります。それは、この気づきという天からのギフトを受け取り続けているからなのです。振り回し社長と言われながら、今日もありがたく受け取り続けます。本誌はこれからも気づきのギフトボックスでありたいと願っています。
プレマ株式会社 代表取締役
中川信男(なかがわ のぶお)
京都市生まれ。
文書で確認できる限り400年以上続く家系の長男。
20代は山や武道、インドや東南アジア諸国で修行。
3人の介護、5人の子育てを通じ東西の自然療法に親しむも、最新科学と医学の進化も否定せず、太古の叡智と近現代の知見、技術革新のバランスの取れた融合を目指す。
1999年プレマ事務所設立、現プレマ株式会社代表取締役。
保守的に見えて新しいもの好きな「ずぶずぶの京都人」。