三日坊主は、なぜなるのでしょうか? 新年になり、新たな目標をつくった人もいることでしょう。今回は新年らしく、目標の立て方と、三日坊主の対策についてです。
これまでに鍼療室で幾度となく繰り返されてきた患者さんとの会話にこんなものがあります。
「私、やっぱりダメみたいです。」
どうしたの?
「我慢できなくなって、クッキー食べちゃいました。」
そっかぁ。それで、美味しかったか?
「はい。でも、いいんですか?きっと先生に叱られると思ってました。」
かまへんやん。これまで頑張ってきてたから、美味しかったやろ。良かったやん。
病気を治すためには甘いものを控えた方がいいというアドバイスを忠実に守ってきて、あるときそれを破ったからとご自身を責めてしまう。たった一度のことで、それまで真面目に取り組んだ数日間のすべてが台無しになってしまうものでしょうか。
禁煙なんかでも同じですね。宣言してから10日目に1本吸ってしまって、「ダメだ」となる。だけど、例えばそれまで毎日10本吸っていたとしたら10日間で100本吸っていたところをたったの1本で切り抜けたのだから、100分の1。テストでいえば99点取ったということになります。テストで99点の人が「ダメだ」なんて言っていたら、きっと友達はいなくなりますよね。
視点を変えて、食べられた側のクッキーの気持ちを想像してみましょう。「美味しかった」「ありがとう」と喜んで食べられるのと、「食べてしまった」「ダメダメ」という気持ちで食べられるのと、どちらが嬉しいでしょうか。その気持ちの差が、あなた自身の体に入ってきてからの作用を良くも悪くもする。クッキーそのものが悪いのではなく、自身の心持ちが悪い方向に働かせてしまうのではないかと考えられます。なので、まずは「美味しかった?」と尋ねて、受け止めてもらうようにしています。
一度のことで台無しにしてしまうのは、完璧主義。完璧を求めるのではなく、またそこから仕切り直せば良いのですから。クッキーを美味しくいただけなかったり、クッキーのせいで台無しになったなんて、クッキーに対して失礼です。どうせなら、美味しくいただきたいものですね。
「三日坊主」になって、途中で投げ出してしまうのも同じです。実は、三日坊主になる人は完璧主義者なのです。そして、完璧を求めるがゆえに、完璧でない自分のことが嫌いという共通点があるようです。
そもそも、なぜ三日坊主になるのでしょうか。
4日目がないからですね。1日・2日と頑張ってきて、3日目にできなかった。それで「ダメだ」となる。4 日目にまた仕切り直してやっていけばいいことを、できなかった3日目を責めてしまう。完璧主義が自分を苦しめているのです。できなかった日は、休んだと思えばいい。それよりも、やってみようと始めた自分のことを褒めてあげてほしいと思います。
さらに言えば、三日坊主になる人ほど、目標も完璧です。例えば「腹筋を毎日10回する」といったものですね。その目標を一度見直してみるといいでしょう。まずは視点を拡げて「毎日」を外し、週単位にして、「腹筋10回を週に4日以上する」ではどうでしょうか。三日坊主になりかけても、取り返すチャンスはあります。仮に3日しかできなかったとしても、それで良しとしてもいいでしょうし、その次週だけは5日することで前週の分を取り返すことにしてもいいかも知れません。完璧でないからこそ、臨機応変に対応できるゆとりを持っておくことができます。最初にハードルを下げておくことで「できた自分」をつくっていくことです。
あとは、手帳に「できた」日の印をつけて「見える化」していくのもいいでしょう。どうせならカラーペンを使うと、きれいに見えますね。実際には半分ほどの日数できていれば、ページを開くとカラフルなので後から振り返る時にも楽しくなります。
もちろん、完璧な目標を立てて完璧にこなせる人はそのまま続けられるといいでしょう。ただ、完璧を求めすぎて自分を好きになれなかった人にとっては、好きな自分の姿に近づいていけるはず。
三日坊主も大歓迎で、元気な一年を過ごしていきましょう。
執筆 圭鍼灸院 院長 西下 圭一 病院勤務を経て、プロ・スポーツ選手からガンや難病まで幅広い患者層に、自然治癒力を引き出していく治療を特徴とする。 鍼灸師、マクロビオティック・カウンセラー、リーディング・ファシリテーター。 |