弊誌に連載コラム『魂とのコミュニケーション』を執筆してくださっている宮崎ますみさん。
女優を辞め、二人の息子さんをアメリカで育て、がんを克服し、ヒプノセラピーを学び、妊婦さんやママなど、たくさんの女性たちのために、自分の人生を取り戻すサポートをしてこられました。そんな宮崎さんに、生命の誕生について、子育てについて、お話を伺いました。
宮崎 ますみ(みやざき ますみ)
1968年生まれ。14歳で父親を亡くす。翌年、芸能界入り。舞台、映画、テレビドラマなど幅広く活躍。25歳で前世療法を体験。ルドルフ・シュタイナーの人智学や、心理学、精神世界に興味を抱く。結婚を機に渡米、子育てに奔走しながら自己を癒すなかでインドヨガに目覚める。2005年女優活動を再開するも、乳がんが発覚。帰国しさまざまな方法で乳がんを克服。離婚後、ヒプノセラピーを本格的に学ぶ。2007年舛添要一厚生労働大臣より「健康大使」を任命される。自己の本質としっかりと繋がりながら、より豊かで美しい人生を送るためのサポートとしてヒプノセラピーや講演活動をおこなう。米国催眠士協会認定インストラクター・米国催眠療法協会認定インストラクター・国際催眠連盟認定インストラクターほか
女優時代に感じた虚しさの理由
——ヒプノセラピーに至るまでの経緯についてお話を伺えますか?
宮崎さん(以下宮崎)高校2年でデビューするまで、部活(水泳部)熱心な普通の学生でした。
高校1年のとき父が急死したことで「何のためにこんなに泳いでいたんだろう」と、すべてのことに意味や目的を見失ってしまったのです。
三者面談で「問題ありません。このまま推薦で大学に行けます」と言われたとき、「違う!それ私じゃない」という内なる叫びを感じました。
大きな喪失体験により自分に嘘がつけなくなったのです。
部活を辞めて勉強する気も失せて、幽霊のようにただ学校に通っていたとき、地元で撮影する映画のオーディションがあるからと友達が履歴書も写真も用意してくれて、お遊び感覚で送ったら受かってしまった。
それが芸能界入りのきっかけです。
人生、なにか必死でがんばっているときよりも、空白のような余裕ができたときに、大きなものが、すっと目の前に差し出される気がします。
芸能界に入ってから、小学校低学年のころ「私、女優になる!」と思っていたことを思い出したのですが、そのための努力はしていませんでした。
事務所から契約しないかと言われ、契約するとクラリオンガールに受かった。
楽しかったけれど自ら努力して掴んだ夢ではなかった。
とはいえ「人に認められたい」「愛されたい」という欲求や習慣から、部活のときのように一生懸命がんばりました。
そして、周囲の期待に応えていくなかで、また枯渇していったのです。
「これもやはり本当の自分じゃない」と。
今思えば、子どものころからいつも本当の自分を掴もうとしていたのかもしれません。
クリエイティブなはずの芸能界。
実際の現場は、全然クリエイティブではなく、スタッフはプロデューサーの言いなり。
得体のしれないコントロールのようなものを感じ、それは日本という国そのものに蔓延しているように思えました。
その違和感の謎が解けたのは5年ほど前にギリシャに初めて行ったとき。
地中海沿岸で紀元前4世紀くらいから800年ほど続いた古代神殿医療では、魂を取り戻す各種セラピーがおこなわれていました。
ヒプノセラピーの起源もそこにあるのですが、音楽、芝居、体を鍛える、ハーブ療法、断食、沐浴など、全部、今の私たちがやろうとしていることです。
そして、エピダウロスの考古遺跡という世界遺産の劇場に立ったときに、過去世でそこに立っていた自分を思い出したのです。
演じていたそのときの体感覚も思い出しました。
神官であり役者であり、演じているというよりも、そこに立つだけで何かを降ろしていたという感覚だったのです。
ギリシャ悲劇のお芝居なのですが、医療としての芝居は、物語というメタファーを通して観る者の意識を内へと向かわせながら、魂の本質へと戻していくというものでした。
そこで「過去に魂を取り戻すための芝居をしていたから、後世(今)で女優をやってみたけど、そもそも芝居の目的が違うのだ」と気づいたのです。
私が女優をしていたのは、たかだか10年。
結局、女優は魂の使命のための前準備だったと気づきました。
今生の人生の前半は、表現者としての基礎を築くという計画だったのでしょう。
子どもは預かりもの自分のものではない
宮崎 では芸能界を辞めてなにをすべきか。
当時、結婚願望もなく、子どもを持つことに夢を抱いたこともない私でしたが「未来を担っていく子どもたちのために」という言葉がふと浮かんだのです。
自分でも驚きました。
でも、その後、結婚することになり、すぐに妊娠。
「未来を担う子どもたち」の前に、まずはわが子を育てることが、自分のレッスンなのだと気づきました。
芸能界にいたころ、現場で若い人たちの感性がどんどん潰されていくのを見ていたので、彼らのインナーチャイルドを救いたいという想いがありました。
本来、みんなピュアですばらしい創造性を持っていて、それを自由に表現できるはずなのに。
そんな社会に生きる日本の子どもたちの未来に危機感を覚え、子どもたちの魂がのびのびと自由に開花できるような社会をみんなで一緒に作っていけたらと思いました。
そんな経緯があり、二人の子どもが巣立った今、「私の人生、これからが本番だ」と思っています。
想いと行動の矛盾を失くしていきたいですね。
ヒプノはまさに魂・心・体の三位一体。
これを整えていかなければなりません。
私自身、病気によって大きく人生をシフトできました。
本当の魂を生き切れていないというところから修正するきっかけをくれたのです。
最初から魂の使命に則って生きることができれば大病になる必要などないと思います。
——本当の望みをちゃんと生きていることが重要ですよね。
宮崎 結婚したころ夫はアメリカに住んでおり世界中を飛び回っていましたので、私も日本の家を引き払いアメリカに移住しました。
妊娠には気づいていませんでした。
普通に朝食を食べていたら、「心配事にフォーカスして」と聞こえてきたのです。
芸能界を辞めて心配ごとはないはずだけど、そういえば生理が遅れている……と気づいて。
はっきりしたくて瞑想を始めたら、空の上の雲の上で岐路のような道を見せられました。
まず一方の道を行って見たら芸能界に逆戻りしていて、笑いたくもないのに着飾って笑っていて「嫌だ!」と思いました。
もう一方の道を行くと険しい森の中で、踏み込んだことが無い未知な世界という感覚があるんです。
その奥で白いドレスを来た女性が立っていて赤ちゃんを抱いていて、よく見ると自分でした。
未知なる世界で踏み込んだこともなく迷いはありましたが、二者択一だったので(笑)、「神様、私に子どもを授けたまえ」とお祈りしたら、メラメラ燃える炎が爆発したようにストーンってお腹に落ちてきました。
ドッチボールをキャッチしたときのような感覚になってから、ハッと目が覚めて。
落ち着こうと思って、友達がくれたエンジェルカードを一枚引いてみると『Birth』のカードがでました。
それで妊娠検査薬でチェックしたら陽性でした。
そんな不思議な体験をしたということもあり、やはり子どもは当然ながら自分の所有物としての子どもではなくて、預かった存在だという意識です。
すべてそうですよね。
自分のお金で買ったとしても、本来「自分のもの」ではないはずです。
例えば、土地など人間が勝手に値段をつけて売買しているけれど、そもそも誰のものなのでしょうか。
親子で心と心で語るには自分に嘘がないことが必須
宮崎 ハワイでの暮らしでは特に自然への畏敬の念を感じさせられました。
移住してすぐ電気が通らない、電話も通じない、ガスは爆発するなどトラブルが続き、ある晩、子どもが二段ベッドから私の上に落っこちてきました。
痛みのなかで「挨拶が無い」という言葉が聞こえたのです。
そこで花や果物や水晶など、お供え物的なものをリビングに置き、自己紹介して
「今回住まわせていただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたします」
と挨拶しました。
また、ハワイではどこに行くにも、すぐ道に迷ってしまうので
「どうぞスムーズに行けるように導きください」
と挨拶と祈ることを忘れないようになりました。
日本に戻ってからも、必ず事前に訪問する土地への挨拶をしています。
——赤ちゃんは預かりものということですが息子さんたちはどんな存在ですか?
宮崎 長男は魂がストーンと入ってきただけあって、これと思ったら突き進む人。
次男は、お腹に入る半年前にふわふわと様子を見にきて、ふっと見ると、ふっと隠れる。
遊んでいるのです。
楽しい子だなとわかりました。
なかなかお腹に入らないので「神様、この子が本当に私のところに来るまで大事に預かってください」と伝えると魂が上に戻っていく感覚がありました。
生まれてきた2人は、そのイメージそのもの。
決まった子が親の元にやってくるのだとわかりました。
「ヒプノ赤ちゃん」でも、そういった深いレベルでのコミュニケーションをします。
催眠出産により痛みを軽減させる出産法というのは表向きのもので、実は、スピリットのレベルでの親子関係や子育てについて教えています。
表層ではなくハートとハートで語るのです。
ということは、親のほうにも自分に嘘があったらダメです。
本当の想いと言葉にずれがあると通じません。
だからお母さんは、まず自分と繋がり、軸を立てるということから始まります。
本当に穏やかに出産するには、その準備こそが大事なのです。
——あぁ、私は出産当時にはそれができていませんでした。
宮崎 もっと知っていたら……と私も思います。
子どもに与える親の影響についてもお伝えしたいです。
私たちが発する言葉、態度、すべてが子どもにとって暗示になっているのです。
幼少期の子どもはスポンジのように吸収し、潜在意識として大脳辺縁系の核なる部分に植え込まれていきます。
知識を司る大脳新皮質は10歳ぐらいから発達しますが、胎児のころから外部からの刺激やお母さんの心理状態が影響するので、妊娠中から教育は始まっています。
子育てが上手くいかない人を退行させると、お母さんのお腹の中にいることが少なくありません。
そして、お腹の中でお母さんの意識を感じ取っています。
本人はなにも経験していないはずなのに、お母さんの経験していることをすべて吸収している。
お母さんになにが起こっているかすべて見えているのです。
七田式の七田眞先生は松果体でそれをイメージ化していると表現しておられました。
池川明先生も母親が話したことのないエピソードを子どもが知っているとおっしゃっていますよね。
(8月号に続く)