最近、ロコモティブシンドローム(通称:ロコモ)という言葉をよく耳にします。一般的に、ご高齢の方が運動器の障害により「要介護になる」リスクの高い状態になることをいいます。歳を重ねても要介護とならないよう、運動器を長持ちさせ障害を予防し、身体の痛み無く自分の力で歩けることは、生活の質を維持する意味でも、とても大切なことです。
身体の痛みが無いということは、物理的に身体の歪みが少なくバランスが良い状態といえます。男女の差や、身体の歪み具合の差、生活習慣などさまざまな要素が関係していると考えられますが、男性よりも女性の方が相対的に筋肉が柔らかいので、歯を失うと身体のバランス感覚を失いやすく、関節などに痛みを持つことが多いようです。また、単純に姿勢にも変化をもたらしてしまいます。姿勢を正すことができ、なおかつ、歯を整えることで歯止めをかけておけば、最高のアンチエイジングとなるはずです。
入れ歯が合わなくて痛みが出てくるのは、姿勢を維持する筋肉が落ちてきたというサインでもあります。入れ歯を調整すると痛みは消えますが、それにより姿勢を悪くする方向に加速してしまう可能性も否めません。もちろん、お口の中に痛みはない方がよいのですが「歯を調整しますか?それとも姿勢を正しますか?」という二者択一といえるほど、咬み合わせと全身は影響しあっています。
子どもの運動機能、遅れているのは歯並びのせい?
昨今、小児のロコモが目立つようになってきました。それは妊娠中のお母さんの食事を含む生活環境や出産の多様性、産後の生活環境などいろいろなことが関係していますが、小児の歯の並びを見ると、霊長類にある霊長空隙という歯と歯の隙間が存在しない子がとても多くなってきているのがわかります。本来、乳歯の並びには隙間があるのが正常です。しかし、現代の子どもさんの歯は、すべて密集してきれいに並んでしまっているので、大人の歯に生え替わったとき、スペースがないために並びがガタガタになってしまうのです。もちろん歯の並びが悪いと咬み合わせや発育にも影響しますし、口臭も出てきます。また、一番前の二本の歯が八の字に並んでいるなど、正常では無い歯並びが増えています。
それに比例して、運動機能に遅れを感じたりするお子さんもとても多くなってきています。例えば、片足立ち、ジャンプ、スキップなど、できないのに無理矢理させようとしても、怪我をするか、できないかしかありません。ヒトは霊長類で哺乳類ですから、まずは、おっぱいを飲むことを通して口腔周囲の筋肉をトレーニングし、舌の使い方を覚えるという発育のステップを踏むことが大切なのです。吸わなくても飲めるほ乳びんの使用や、おんぶやだっこで不自然な姿勢を取らされているなど、過保護で間違った生活習慣を是正しなければ、小児の歯並びは、本来の隙間があるきれいな状態にはなりません。
当医院では、機能と形態、形態と機能を双方から追いかけ、歯並びと口腔育成、身体の骨格構造のバランスを常にとることによって、今まで不足していた要素を訓練し、ロコモを解消しております。かみあわせが正常になった瞬間に、不思議とジャンプができるようになるなど、運動機能と歯、口腔育成の状態がリンクしていることを、逆に、日々私も感じさせられています。
子どもさんにとって不足している要素はなるべく早く補正してあげないと、次のステップの発育ができなくなり、何かしら障害を克復できないままになってしまいます。苦手ではなく、ほんの少しの気づきと働きかけで「できない」が「できる」に変わっていくこともあるのです。
小児の方でもご高齢の方でも、なるべくその方にあったベストの状態を作り、維持できるような環境作りのお手伝いができたら幸いです。
虫歯から始まる全身の病気ということも以前にお話しましたが、動物は歯が無くなると死んでしまいます。かみ合わせを含む口腔内環境をもう一度チェックしてみてはいかがでしょうか。歯を失ってから後悔しないために……。
ケテル齒科醫院 院長
歯科医師・整体師
日本抗加齢医学会専門医
国際統合医学会認定医
ドライマウス研究会認定医
足指インストラクター
田中 利尚(たなか としなお)
東京都練馬区出身。
小学校は水泳と剣道、中学校はサッカー、高校は自転車で北海道や四国まで一人旅、大学で少林寺拳法。
小児喘息や膝を壊したときに、医療不信に陥った経験を活かし、今に至る。
「本当に治る治療」を目指し統合医療を提供。
健康は歯からを確信している。
ケテル齒科醫院東京都港区西麻布4-22-10 プレステージ西麻布3F
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