「美味しく・楽しく・学べる」体験型観光としてサトウキビ畑をご案内するなかで、「へぇ~ほぉ~」とお客様から驚きや感心の声が上がり、納得していただくことが多いお話をご紹介します。今月はサトウキビの歴史について。
噛むと砕ける甘い石!?
収穫したサトウキビを見て「初めてかじった人はすごいよね」という感想を聞くことがあります。サトウキビの歴史は紀元前300年ごろのインドにさかのぼります。当時のマケドニア国王・アレキサンダー大王のインド遠征記録に「インドには蜂蜜用に甘い汁のとれるアシが生えている」、「噛むと砕ける甘い石がある」という記述が残っています。前者はサトウキビ、後者は砂糖です。現在もサトウキビ生産量第2位を誇るインドですが、その時代すでにサトウキビの汁を搾って、あく取りをしながら焚き詰めて結晶化させる技術をもっていたというのは驚きです。
東京でサトウキビ栽培!?
日本が同様の技術を手に入れたのは17世紀ごろ。砂糖自体は奈良時代に日本に入っていて、薬品として扱われていました。ヨウカン好きの足利義政、コンペイトウ好きの織田信長のエピソードも残っていて、砂糖が貴重だった様子がうかがわれます。砂糖の輸入量の増加に伴う国内の輸出資材(銀や銅)の枯渇を問題視した8代将軍徳川吉宗は、全国にサトウキビの栽培~砂糖生産を奨励しました。当時は江戸城内でもサトウキビが栽培されていたそうです。讃岐・阿波の和三盆糖は独自の技術進化を遂げた事例です。
参考:斎藤祥治・内田豊・佐野寿和(2016)『改訂版 砂糖入門』日本食糧新聞社/杉本明・スズキ コージ(2000)『サトウキビの絵本』農山漁村文化協会/原田信男(2004)『江戸の料理と食生活』小学館