7月27日から8月2日までおこなわれる第84回日本循環器学会学術集会で「健康長寿のための最良の食事とは?」というテーマで講演をさせていただきます。この学会は3月に予定されていたものの、COVID-19の影響で夏に延期に、さらにリモート開催に変更になりました。
医師をはじめとする医療関係者と一般市民の皆さまの前で、ライブ講演をしてディスカッションをおこなえないのは非常に残念ですが、考えようによっては会場に足を運べる人だけでなく、世界中どこにいても学会に参加でき、一般参加のセクションも無料で繰り返し視聴できると聞いています。後からでも繰り返し聴講することができるのであれば、とても恵まれた機会になったと感謝しています。
この原稿を書いているのは6月末ですので、皆さまが本誌を手に取られるころには、すでに学会は差し迫っているか終了しているのですが、今号ではこの学会に招致された意味についてお話をさせていただきます。
タンパク質はなにから摂るのか
講演では健康を維持増進するためのたんぱく質の摂取法をお話しします。
これまで講演や取材の依頼をいただくたびにPBWF(プラントベースホールフード。植物性の食材をなるべく精製加工しないで食べる)で十分なタンパク質を摂取できるばかりか、健康にとって有益なその他の栄養素を一緒に摂取でき、さらに病気を引き起こしたり進行させる悪い要素を体のなかに入れることを抑制でき、地球環境までも守ることができる究極の食べ方であるとお話ししてきました。
病気になるのも、進行させるのも改善させるのも、食べ物を軸とした生活習慣に大きく影響されるにも関わらず、医学部では栄養について学ぶ機会がほとんどなく、臨床の現場においても栄養(生活)指導に費やす労力に見合った報酬を受け取るシステムが構築されていません。多くの医師が食事で病気を治せることに気づいていないか気づいても実行できずにいるのです。
プラントリシャンとしてできること
プラントリシャン(Plantrician)とは、Plant=植物、Nutrition=栄養、Physician=医師を合わせた造語で、「プラントベースの食べ物の効用についての知識を熟知し活かしている医師」を指します。
米国ではクリントン元大統領が、食事をプラントベースのホールフードに切り替え、体重が10kg以上減少し、心臓発作が再発しない体になったことが話題となって、医療と食習慣の分野で変革が起こり、「手術よりも正しい食事」という考え方が広まりつつあります。
プラントベースホールフードはがんや心臓病、脳卒中、糖尿病などあらゆる慢性病に対して有効でかつ、費用効率が高い治療法で医療費の大幅な削減さえも望めます。
この食事が正しいことは膨大な科学的根拠によって裏付けられており、特に循環器の分野においては比較的短期間で良い効果が得られることがわかっているのですが、ほとんどの医療従事者はそのことを知りません。一般の方々に知っていただくのはもちろん重要ですが、日本の医学会で医療従者に対してお話しできるのは非常にまれで重要な機会です。循環器分野の先生方に少しでも響くお話をして日本の医療変革に貢献できるよう準備を進めています。
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