2017年から8年近く執筆させていただいた『CHOICEするということ』の連載を終了することになりました。今号から最終回まで最後に私が皆様にお伝えしたいことを書きます。
形成外科医として歩み出してこの春で42年目となります。医学生時代に慢性疾患(生活習慣病)に対するさまざまな治療法を学ぶも、ほとんどの場合、原因不明で完治することはなく、患者様が亡くなるまで付き添うことが医師の仕事だと知りました。学生のころの私は、そのような病気を持つ患者様と日々向き合う精神的な逞しさも、難病を根治する方法を研究する忍耐強さも持ち合わせていませんでした。そんななか、自分が施した治療で患者様も自分も幸せになれる形成外科の分野を知りました。子どものころから手先の器用さには自信があり、細かい作業が得意でしたので、形成外科医として手術の腕を磨く道を選びました。35年前にメディカルエステを提唱し、レーザー治療や美容皮膚科治療のパイオニアとして非手術的治療に取り組んできたのも、患者様に美しくなっていただく治療の一環でした。
形成外科の分野で邁進していた私に転機が訪れたのは、2011年にコリン・キャンベル博士の著書『The CHINA STUDY』に出合ったことでした。PBWF(プラントベースホールフード:植物性の食材をなるべく精製加工することなく食べる)の健康への影響を知ったことは私のなかで革命でした。この食事法を実践することで自分自身の健康も向上し、臨床に栄養学を取り入れると治療成績が向上しました。
食事に目を向けるようになると、日本で実践されている慢性疾患に対する保険治療の多くが間違っていると気づきました。薬で症状を抑え、「正常」の範囲に入った検査値を評価する医療、必要でない検査や治療(投薬)をおこなう過剰診療など、医療産業や製薬産業によって高額で過剰な医療をおこなうように仕組まれたシステムのなかでは、食事を正すというシンプルかつ安価でありながら根本的な治療になりうるPBWFは治療として認識されません。しかし皆が問題に気づき、自分の体のことは自分で考えチョイスしなければ医療の崩壊は免れませんし、病気の克服にも繋がりません。慢性疾患は、(食)生活習慣を改善しない限り根治はないのです。
トランプ米大統領が新政権のアメリカ合衆国保健福祉省(HHS)長官に指名した弁護士のロバート・ケネディ・ジュニア氏は、長官承認に向けた公聴会で「自らの幼少期にはほとんど見られなかったアメリカ人の慢性疾患が今は蔓延している。これは食習慣や医療システムが狂っている結果である」との考えを述べ、議会の承認を受けました。FDA(食品医薬品局)やCDC(疾病対策センター)、NIH(アメリカ国立衛生研究所)などを配下に持つHHSは「MAHA(メーク・アメリカ・ヘルシー・アゲイン)米国を再び健康に」を掲げ、過去2世代にわたるアメリカ人の健康急落の原因を調査すると表明しました。健康急落の要因として、子どものワクチン接種計画/電磁波放射/グリホサート(除草剤ラウンドアップの主成分)やその他の農薬/超加工食品/人工食品添加物/選択的セロトニン再取り込み阻害薬SSRI及びその他の精神薬/PFAS・PFOAS(有機フッ素化合物)/マイクロプラスチックなどを挙げ、初めの100日で慢性疾患の原因を調査すると宣言しました。これらはコリン・キャンベル博士が2冊目の著書『WHOLE』で指摘した内容と重なります。私が『WHOLE』を2020年1月に監訳・出版したのは、日本の皆様にもこのことを知っていただきたい一心でした。
次号ではHHSが着手すると表明したこれらの問題のなかで、特に皆様にお伝えしたいことを著します。