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法の舞台/舞台の法

日常のなかにある法律問題踊る弁護士の活動報告

弁護士/舞踏家

和田 浩 (わだ ひろし)

1977 年新潟県柏崎市生まれ。京都大学総合人間学部卒業。弁護士として、さまざまな分野の事件に取り組んでいる。なかでも、障害者の権利に関する案件に多く携わっている。他方、舞踏家として舞台活動もおこなっている。福祉、芸術、司法の連携について、あれこれ考えている。
縁(えにし)法律事務所 
京都市中京区新椹木町通二条上る角倉町215
075-746-5482

車椅子訴訟の判決

投稿日:

もう2年近く前になりますが、私はこのコラムで、私が担当しているある裁判のことを取り上げました。やや単純化して説明すると、先天性ミオパチーという障害を有する原告が、電動リフト付き車椅子の費用支給を求めて、A市を相手に裁判を提起した事案です。

原告がこの裁判を提起したのは、2016年3月16日のこと。ちょうど5年後の今年3月16日、判決が出ました。判決において裁判所はA市に対して、電動リフト付きの車椅子費用を原告に支払うよう命じました。私たちの請求が認められたのです。

今回のコラムでは、この判決についてご紹介したいと思います。なお、判決では、原告の請求が退けられた部分もあるのですが、今回のコラムでは、その部分は割愛したいと思います。

電動リフトを認めるか否か

まず、事案について簡単にご紹介します。原告は全身の筋力が低下しているため、常時車椅子を利用して生活しています。他方、原告は漫画家を志して京都市立の美術工芸高校で学び、その後、京都精華大学のマンガ学部に入学しました。

しかし原告は、身体の可動域が狭いため、大きな紙に絵を描くことが困難でした。また漫画を描くためには事物をさまざまな角度から観察することが不可欠ですが、原告は自ら立ち上がれないため、限られた角度からしか事物を観察することができません。ゆえにこうしたハンディキャップを乗り越えるには、電動リフト付き車椅子が必要でした。絵を描く手の高さや事物を観察する目線の高さを自由に調整できるからです。

そこで原告はA市に対して、障害者総合支援法に基づき、電動リフト付き車椅子の費用を支給するよう申請しました。ところがA市は、電動車椅子自体の費用の支給は認めたものの、電動リフト部分については却下しました。

これを受けて原告は、電動リフト部分を却下した決定を取り消すことと、電動リフト部分の費用を支給することを求めて裁判を提起したのです。

ヘルパーの支援で十分なのか?

提訴から5年間、弁護団はさまざまな角度から、原告にとってリフト機能が不可欠であると主張、立証してきました。対してA市は、原告の日常生活の不便はヘルパーによる支援等で解消されうる、またリフト機能がなくても大学で進級が可能であるなどと反論してきました。

判決は原告の障害をふまえると、リフト機能が原告の身体機能を代替し、原告が日常生活を送るうえで必要不可欠であると判断しました。また原告が絵を描く、また被写体を観察するためにはリフト機能が必須で、就学上もリフト機能が必要不可欠であると判断しました。そしてリフト機能部分を却下したA市の決定を違法と判断し、A市に対して同部分の費用を原告に支給することを義務付けました。この判決に対して控訴がなされなかったので、判決は確定し、原告にリフト機能分の費用が支給されることになりました。

個別の事情を丁寧に拾う

この判決は、障害を有する方の個別の事情を丁寧に拾い上げて、真に必要な車椅子の内容を特定した点で、重要な価値があります。今後自治体が障害を有する方に対して車椅子費用を支給する際に、参照されるべき判決だと思います。また個別の事情を丁寧に拾い上げる判断手法は、車椅子の費用支給の問題だけではなく、障害を有している方に対するさまざまな支援や配慮の提供に関して、応用できる考え方です。

さらにこの考え方を押し進めると、障害を有している方のみならず、社会に生きているあらゆる人について、個別の事情を丁寧に拾い上げ、必要な支援や配慮を提供すべきいう考え方にいき着くでしょう。このような考え方を広め、誰もがその人らしく生きることができる社会が形成されるように、弁護士として活動を続けたいと思っています。

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