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ながれるようにととのえる

身体の内なる声を味方につけて、生きる力をととのえる内科医、鍼灸をおこなう漢方医のお話

やくも診療所 院長・医師

石井恵美 (いしいえみ)

眼科医を経て内科医、鍼灸をおこなう漢方専門医。漢方や鍼灸、生活の工夫や養生で、生来持っている生きる力をととのえ、身体との内なる対話から心地よさを感じられる診療と診療所を都会のオアシスにすることを目指す。
やくも診療所/東京都港区南麻布4-13-7 4階

身体の声に気づくこと

投稿日:

知人の息子さんは、新型コロナウイルスに感染してから2年近く、息苦しさやみぞおちの詰まり感などのスッキリしない体調が続いていた。感染した当時は、感染者には厳しい目を向けられ、感染しても医療機関にスムーズにかかれなかった。そして、自身のケアだけでは症状からなかなか抜け出せないので、私に連絡をくれた。

罹患時は、発熱は37・7度くらいで、その10日後に酸素飽和度の低下があったようだ。このときの発熱は、ウイルスが体内で増殖するのに対して、身体が熱を上げることで、これ以上ウイルスが増殖しないよう身体を守ろうとする反応で、自己の治癒力によるものだ。

しかし、発熱して病院に行くと、多くの場合、解熱剤が処方される。異常な高熱が速やかに解熱しないときや、高熱の影響で臓器に危険がおよぶ状況であれば、解熱剤で解熱する必要もあるだろう。また、日ごろから低体温であったり、なにかの理由で自己の治癒力が著しく低下していたりすると、ウイルスを排除するための発熱スイッチを上手く使えないこともある。しかし、しっかりと高熱を出すことは、生体がウイルスと闘い、感染から速やかに回復に向かうには大切だ。

知人の息子さんの場合は、発熱したが思うほどは熱が上がりきらなかった。その後、呼吸へのなんらかの変化があった。もともと異常な低体温があったり、免疫力が低下したりしている訳ではなかったので、身体は発熱で炎症を収めきれなかったのではないかと考えた。そして、炎症が長期にわたりスッキリできず、日々暮らすなかで、さらに炎症を上乗せしているような状態だと思った。

西洋医学的な検査では、明らかな異常を確認できなかった。診察すると、みぞおちに、大きな塊のような硬さがあった。そして、困っている症状につながる漢方的な所見を、脈診や腹診で確認できた。しかし、みぞおちの硬さを考慮すると、簡単に改善できる状況ではなさそうだった。息子さんの困りごとのひとつは、目に見える検査では原因を確認できず、実際にわかることがなにで、どうしてなにもわからないのかであった。私はひとまず漢方的な診察で確認できた所見を、丁寧に説明した。その説明のなかに、息子さんが身体の異変に対して感じていたなにかと一致し、腑に落ちることがあったようだった。そして、心身を楽にできる取り組みを、日々少しずつでも増やしていくことや、そういった視点を生活のなかに取り入れて、できるなにかを一緒に考えた。漢方薬の内服もすすめた。年単位の時間を要したが、困りごとは随分減って過ごせているようだ。

心身の解像度を上げる

だれでも自覚症状は不快なものだ。もし症状が心地良いとしたら、困らないどころか依存してしまうのではないだろうか。症状が不快だからこそ、身体がなにに困っているのか、身体の声に気づけるチャンスなのだと思う。

しかし、身体に負担がかかり続けた結果、自覚症状として感じることができない人にも遭遇する。例えば、肩こりがない人がなにかをしていて肩が凝り始めたとすると、すぐに凝りを感じる。しかし、すでに身体が鎧のように硬直した人が肩が凝り始めたとしても、凝ったことに気づかない。「症状がない」といっても、本当に健康で症状がないことと、自覚症状として身体の声を感じることができないことではまったく異なるのだ。

自覚症状は困りごとがあるという心身の異変を教えてくれている。それを繊細に感じとれるよう心身の解像度を上げておくと、困ったときに自身を追い込まないでいられるように思う。それは身体や心に起こる症状に対してより良くなるための地道な対処や、もやもやしながらも地味なことをやり続けられる気持ちをつないでくれるように感じている。

- ながれるようにととのえる - 2025年4月発刊 vol.211

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