2021年12月29日、FOuR DANCERS vol.210に出演しました。以前もご紹介したことがありますが、FOuR DANCERSは、UrBANGUILD京都で毎月数回実施されているダンス・イベントです。このイベントは、UrBANGUILD京都のスタッフの方がブッキングをおこない、毎回4名(4組)のダンサーが、30分間ずつパフォーマンスをおこないます。2021年、私はこの企画に3回出演しており、12月29日がこの年最後の出演となりました。今回は、バレエ・ダンサーの植木明日香さんにお声がけいただき、デュオをしました
『手の倫理』から
作品をつくるにあたり、まず私が参照したのは、伊藤亜紗さんという哲学者の『手の倫理』でした。「ふれる」という営みによってひらかれる人と人との関係について考察された哲学書です。
「ふれる」ことを通じたコミュニケーションは、ダンスにおいても重要です。特に、デュオにあっては、「ふれる」ことを通じたコミュニケーションそのものを作品として提示することも可能であるように思いました。そこで、今回は、「ふれる」ことを作品の一つの鍵にしたいと考えました。他方、植木さんと稽古を重ねるうちに、それぞれが抱える課題や想いが交錯し、作品が構成されていきました。
作品の構成
作品は、植木さんのソロから始まります。植木さんのソロは、やや激しい動きにより構成されていますが、その激しさは、踊り手の内面的な葛藤を意味しているでしょう。他方、私はその間、踊っている植木さんの周囲をゆっくりと歩きます。その際、私はあくまで私自身の内面世界を生きており、植木さんの生きる世界との接点は生じません。つまり、このとき、1つの舞台上に2つの異なる世界が立ち現れていることになります。
植木さんのソロが終わると、今度は私が舞台中央でソロを踊ります。私のソロは、植木さんのソロとは異なり、伸びやかな動きを特徴としています。ただ、舞台全体に照明を当てるのではなく、私の周囲のみをスポットで照らすことにより、動きの伸びやかさに反して、私自身の内面が閉ざされている状態を表現しました。実際に、植木さんが、踊っている私に近づき、視線を送りますが、私はそれに気付きません。
私のソロが終わるころ、身体中に付箋を貼り付けた植木さんが私の目の前に現れます。そして、植木さんは、その付箋を読ませようと私に迫りますが、うまくいかず、今度は私の身体に付箋を貼り付け、私の身体に初めてふれます。そうすることで、ようやく植木さんと私の世界が交わります。
その後、ふれあいながら、2人はゆっくりと流れるように移動し、一旦舞台を降り、客席を一回りしてから舞台に戻ります。そして、舞台上で向き合ったところで最後のデュオが始まり、5分程度踊ったところで終演となります。最後の場面については、事前に動きのイメージのみを共有し、具体的な動きは即興に委ねました。
踊り終えて
本番では、舞台上で植木さんの集中力を浴び、私もそれに応ずるように集中し、ソロでは実現し得ないような緊張感のあるダンスをすることができたように思います。即興であることもまた、舞台に緊張感をもたらす要因だったと思います。
踊り終えた後、客席に戻ると、何人かの方が涙を流されていました。嬉しい感想や、示唆に富む助言も多数いただき、踊り手が、作品を観てくださる方々によって支えられていることを、改めて実感しました。こうした観客の方々の想いに応えるためにも、2022年も踊ります。