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くま先生のすこやか診察室

「子どもも親も、家族みんなの笑顔と幸せのために」総合医療くま先生からのメッセージ

統合医療やまのうち小児科・
内科医師

山内 昌樹 (やまのうち まさき)

小児科医として勤務していたが、西洋医学の素晴らしさを感じつつ心から望む医療と現実のギャップに悩み、軽度のパニック障害を経験。YHC矢山クリニックで小児科 を担当し、病気の真の原因を学ぶ。お母さんの自己肯定感を取り戻すことが家族みんなを笑顔にし世界を平和にすると確信している。
〒849-0915 佐賀県佐賀市兵庫北5丁目8-7-2
0952-33-8500
http://www.yamanouchishounika.jp/

罪悪感は母への愛

投稿日:

だれかの期待に応えられなかったときや、自分の楽しみを優先してしまったときに「また、やってしまった」と思う瞬間はありませんか。日々のルーティンワークに疲れて、ちょっと休もうかなと思ったときに「そんなことしている場合じゃないでしょ」と頭のなかに声が聞こえてきませんか。そんな声とともに胸の奥に湧いてくる、ズシッと重たい感覚。それが罪悪感です。

罪悪感の正体は、じつは「記憶のなかのお母さん」です(2025年9月の当コラム参照)。わたしたちが赤ちゃんだったころ、世界は自分と母親だけでした。お母さんが笑えば世界は明るくなり、お母さんが悲しめば世界は暗くなります。そして赤ちゃんにとって、母親に見捨てられることは、生きていけなくなることを意味します。お母さんの価値観を命がけで受け入れようとします。その小さな宇宙のなかで、母親の価値観は、絶対的なものとして刷り込まれます。思春期にその価値観を転換するチャンスがくるのですが、反抗がしっかりできないと、大人になっても親の価値観を持ち続けます。その結果いつも「どう思われるだろう?」と無意識に感じるようになってしまいます。無意識下では「お母さん」という主語がなくなって、罪悪感という感覚だけが残ります。そうして罪悪感の声を絶対の正しさと勘違いしてしまうのです。

ストレスを抱えている子どもたちに、「やりたいことを少しでもやって、やらなくちゃと思いながらやっていることを少しでも減らしてね」と伝え続けています。それですぐに変化が起きる場合もありますが、なかなか変化しない場合もあります。お母さんの罪悪感が強いとなかなか変化が起きないようです。

「正しさ」の正体

最近、患者さんから印象的な話を聞きました。母親から帰省を催促されたのに、仕事も家事も忙しくて、休みたいと思って帰省しないと伝えたとのことでした。それ以来ずっと胸が苦しく、自分はなんて親不孝なのだろうという思いが頭を離れない、というのです。

その方は、自分の疲れや都合よりも、親の望みに応えることが「正しい」と信じていました。でも、それは本当に「正しい」のでしょうか。

100人いれば、100通りの正義があります。「疲れたときは自分を守るのが当たり前」と思う人もいるし、「どんなときも親のそばにいるべきだ」と思う人もいる。どちらが正解ということはなく、ただ「育ちのなかで刷り込まれた価値観」があるだけです。

反抗期は、そのことに気づくきっかけになります。「なんで親の言う通りにしなきゃいけないの」と親の価値観を壊すことで、自分の価値観を作れるようになります。でも反抗期がなかったり、遠慮がちだったりすると、親の価値観は心のなかに居座り続けます。

罪悪感を手放すために、まずその構造を理解しましょう。「これはお母さんの声かもしれない」と気づくだけで、心理的な距離ができます。そのうえで、勇気を出して、その罪悪感を感じることをあえてやってみましょう。「やらなくちゃ」と無理してやってきたことを、いったんやめてみる。「やりたい」と思いながら我慢してきたことを、試しにやってみる。罪悪感の声に小さく反抗してみましょう。それが反抗期を完成させることにつながります。「本当にそれでいいの?」とまた罪悪感が湧くはずです。それでも、勇気を出して「やってみる!」です。

罪悪感が薄れると世界が軽くなります。自分の気分で動いていいし、自分の都合でやめてもいいのです。そこからようやく新しい人生がスタートします。胸に重く居座っていたあの声は「絶対の正しさ」ではありません。それは幼いあなたが精いっぱい愛しようとした、あの人の価値観でしかなかったのです。

- くま先生のすこやか診察室 - 2026年5月発刊 vol.224 -,

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