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鍼療室からの伝言

鍼灸師の西下先生による陰陽や自然食。二十四節気など古来の智恵のお話

圭鍼灸院 院長 鍼灸師
マクロビオティック・カウンセラー

西下 圭一 (にしした けいいち)

新生児から高齢者まで、整形外科から内科まで。年齢や症状を問わないオールラウンドな治療スタイルは「駆け込み寺」と称され医療関係者やセラピストも多数来院。自身も生涯現役を目指すアスリートで動作解析・運動指導に定評がありプロ選手やトップアスリートに支持されている。

厚かましさの本質

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「3週間ほど前から我慢してきた痛みがひかなくて、明日から予定があるので今日診てほしい」。こんな連絡をもらうことが、何度かありました。もちろんできる限り対応はするけれど、夕方とかでどうにもできないこともあります。

そのつらさは理解できます。「3週間も痛かったのか、明日からの予定も不安だね」と共感もできる。「ただ、僕が聞いたのは『いま』なので、前からではない」。理解できて、共感もできても、対応できない理由はハッキリしている。ときには断る勇気も必要です。無理を聞き続けて、自分が壊れそうになった経験が過去にあって、断る勇気がなければ強くいられないと確信しています。

断ることで相手が気を悪くするんじゃないかと心配にもなります。とはいえ、なんでも「はいはい」と聞くのは覚悟が足りないとも思うのです。だからこそ「いま聞いて、今日すぐはさすがに無茶なこと」と、理由を伝える必要もあるでしょう。

無理と無茶との境界

多少の無理はしても、無茶はしないと決めておくことです。「無理」というのは、普段の自分がほんの少し、力加減でいえば1割から2割増しならできることは受け入れる。その影響が自分だけで済まないのを「無茶」と定義づけています。急な対応のために、以前からの約束に影響してしまうのは他の人にまで迷惑がかかる。いつもの力以上の負担が続いて自分が倒れれば、周りにも迷惑がかかります。家族の生活リズムを崩すことにもなります。自分だけで吸収しきれない「無茶」は聞いてはいけない。影響が及ぶ範囲を想像して線引きしていくのです。

厚かましい人が得をする世の中のように思われがちで、それでよいのかどうかです。厚かましさは増える一方で減ることはなさそうです。一度立ち止まって、どこまでの厚かましさなら許されるかを尋ねられていると解釈して、早期に線引きするよう習慣づければいいでしょう。

普段から「気になることがあるときは早めに受診してね」と私は伝えています。駆け込み寺のごとく、困ったときに頼られるのは有難いことではあるけれど、困ったときだけ頼られるのも困りもの。気になってからすぐに治療をすれば一回や二回で終わるものが、痛みとして現れてから時間が経てば何回も治療に通う必要もありそうです。

自分のことしか考えていない人は、実は自分のことすら考えていないのかもしれません。最初の例でいえば、数日様子をみて、すぐに連絡をくれていたら早く治療にかかれて、とっくに痛みは緩和されているでしょうし、翌日からの準備にも早くから取りかかれているだろうし、さらには安眠できて体調だって整っているはずなのです。3週間も我慢する必要はないのです。

急な対応を求められるものに「消防」があります。消防とは「消す」と「防ぐ」の双方があって成り立つ。それと同じことで、日ごろから自分でできる簡単なセルフケアや、日常で気をつけるアドバイスもして、そのうえで早めの受診を伝えているのです。だれかが我慢しなければならない輪は、だれかが早期に止める。そんな学びが伝わることを願うばかりです。

自然にまかせる

禅の言葉に「行雲流水」とあります。空を流れ行く雲、とどまることなく山間を流れる水。こだわりのない、自然で自由な姿を表しています。物事に執着せず、自然の成り行きに身を任せることの大切さを説いています。

無理をして肩に力が入り、相手に合わせようとして窮屈な思いをしていては、自然な自分ではいられません。無茶な要求をするのもされるのも、敬意が欠けているかもしれません。尊重し合える、自然体の人間関係を結びたいものですね。

- 鍼療室からの伝言 - 2026年5月発刊 vol.224

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