前回は、2019年4月26日、京都大学が、京都大学吉田寮生のうち現棟に居住しているとされる者の一部に対して、建物明渡訴訟を提起するまでの経緯についてご紹介しました。今回は、この訴訟の主たる争点とそれらの意味について、簡単にご紹介したいと思います。
主要な争点
まず、主要な争点を整理すると、次のようになります。
①京都大学と吉田寮生との間に在寮契約が成立したか否か
②京都大学と吉田寮生との間に在寮契約が成立したとすれば、その契約はどのような性質のものか
③京都大学と吉田寮生との間に在寮契約が成立した場合、その契約は終了したか否か
以下、それぞれの争点の意味について、確認します。
争点①
まず争点①ですが、仮に京都大学と吉田寮生との間に在寮契約が成立したとすれば、その契約により、吉田寮生は、吉田寮に居住する正当な権原(「権原」というのはあまり馴染みのない表現かもしれませんので、以下では「権利」とします)を有したことになります。
他方、在寮契約などの契約が成立していないとすると、吉田寮生は、吉田寮に居住する正当な権利を有しないと考えることになります。そのため、まずは、京都大学と吉田寮生との間の在寮契約の成否が問題となります。
争点②
次に争点②です。仮に在寮契約が成立した場合に、その契約の法的性質を決定する必要があります。具体的には、在寮契約が、賃貸借契約と使用貸借契約のどちらに該当するかを判断しなければなりません。この争点は、争点③との関係で重要な意味があるのですが、これについてお話しする前に、まずは賃貸借契約と使用貸借契約の違いについて、見ておきたいと思います。
簡単に説明すると、賃貸借契約というのは、当事者の一方(貸主)が、他方(借主)に対して、ある物を「有償で」貸し、借主がその対価として賃料を支払うことを内容とする契約です。この契約については、不動産の貸借など社会でも広く利用されている形式のものなので、イメージできる方も少なくないと思います。
他方、使用貸借契約は、賃貸借契約とは異なり、貸主が、借主に対して、ある物を「無償で」貸し、借主は対価を支払うことなしにその物を使用できることを内容とする契約です。
すなわち、両契約の違いは、有償か無償かという点にあります。
争点③
最後に争点③です。先ほど述べたように、在寮契約の法的性質は、この「契約終了の判断」において重要になります。
なぜなら、賃貸借契約についても、使用貸借契約についても、その契約が終了となる事由が民法などの法律に定められており、両者の終了事由には、異なる点があるからです。
したがって、まずは在寮契約の法的性質を確定させたうえで、その性質に応じて、在寮契約の終了事由の有無を検討する必要があります。
そして、仮に在寮契約の終了事由があれば、吉田寮生は吉田寮に居住する権利を失ったことになりますし、逆に終了事由がなければ、在寮契約が継続していることになるため、吉田寮生は吉田寮に居住する権利を保有し続けていることになるのです。
では、次回以降、それぞれの争点についての京都地方裁判所の判断をご紹介したいと思います。
