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生産者さん紹介

プレマの商品を作ってくださっている生産者さんたちを紹介。 その魅力に迫ります

フェアトレードの有機栽培豆が 次世代のコーヒー文化を担う
有限会社スロー 代表取締役  小澤 陽祐 氏

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街の喫茶店にカフェ、コーヒーチェーンに加えて、コンビニまで。「気軽に一杯」の選択肢は増えるものの、農業資源や労働者、環境に負荷が生じています。この問題に20年前から自覚的だったのが、有限会社スローの小澤陽祐さん。プレマでは有機デカフェコーヒーでおなじみのSLOW COFFEEさんの理念から、持続可能な社会の可能性を探ってみます。


いまは環境負荷を意識した食生活を送る小澤さん。しかし「絶対」ではなく、無理のない範囲で心
がけているそう。コーヒーに関しても同じ考えで、「自社の豆が、ひとつの選択肢になれば」と話す


いまではコーヒーの製造・販売を生業にする僕ですが、2000年に24歳でSLOW COFFEEを開業するまで、ブラックコーヒーが飲めませんでした。その美味しさに、気づけていなかったんです。

毎日、砂糖とミルクの入った缶コーヒーを何本も飲みながら、タバコを吸う。チェーン店のハンバーガーも大好物で、食にも健康にも、まるで無頓着でした。
ただし、考える暇だけを持て余した大学生活を経て、社会を疑う目は養われました。なぜ満員電車に揺られて、通勤・通学しなければならないのか。なぜデパートは夏なのにあんなに寒く、冬には汗を掻くほど暑いのか。なんとなく資本主義社会への違和感が募っていました。

もっとも疑問を抱いたのが、就職活動です。なぜ大学4年生になればリクルートスーツを着て、面接に向かわねばならないのだろう。疑いを抱かずに内定を得て社会に出る同級生を横目に、僕は一切の就職活動をしませんでした。いくら考えても、やりたい仕事が見つからす、かといって、適当に会社に入って年功序列で出世する自分も想像できなかった。卒業後は千葉県松戸市の実家に住んだまま、フリーターになります。

目的もなくバイトに明け暮れたあの頃の夢が、ニューヨーク旅行。僕はヒップホップやR&Bなどの黒人音楽が好きで、マンハッタンのハーレム地区を訪れてみたかった。当時、母校の明治学院大学に、辻信一先生という文化人類学の教授がいました。先生は環境運動家でもあり、2000年代に入って、スローライフの概念を浸透させるべく、「100万人のキャンドルナイト」を発案した人です。またニューヨーク留学、ハーレムに居住した経験があって、ハーレムに関するノンフィクションも上辞しています。

実は在学時、僕は辻先生と交流がありませんでした。けれどもハーレムのおすすめのジャズバー、安心して宿泊できるホテルの情報などを聞きたくて、ひょんなことから先生とお会いする機会を得ました。当時はいまのように、現地でスマホ検索ができません。だからこそ、生の情報を得たいと考えました。

「オーガニック」「フェアトレード」「自社焙煎」の3つが、SLOW COFFEEの理念。現在は小澤さんのお兄さんが焙煎を担当する

それから辻先生との付き合いが始まりますが、あるとき奇妙な誘いを受けます。「〝ナマケモノ倶楽部〟の設立構想を聞きに来ないか?」。疑念を抱きつつ、待ち合わせ場所に行くと、若者が集まっています。「森を再生しよう」なんて声が聞こえて、「なんだ、環境系の社会運動か。自分には関係ないな」と一気に興醒めしました。得体が知れない、気持ちが悪いとさえ、思えてきたんです。

でも、辻先生の話には魅了されました。「〝ナマケモノ〟という動物は、じっとしてエネルギーを無駄にせず、糞をすれば、それが木の栄養になる」。「では人間は?」との疑問が、僕の頭を過ります。大量にモノを生産・消費して廃棄するなら、地球にとってはナマケモノの方が、優しくて素敵な存在なのではないか。

僕は満員電車やデパートに抱いた違和感の出所を理解しました。同時に、その解決策に思い当たります。「人間と地球環境の営みに配慮した、もうひとつの経済活動を探るべき」と気づかされたのです。辻先生も、「環境運動はビジネスなくしては影響力を持てない」との考えで、集まった若者たちで事業を立ち上げることになりました。たまたま〝ナマケモノ倶楽部〟の発起人のひとり、中村隆一さんが九州を拠点にフェアトレードのオーガニックコーヒーを販売していたため、ノウハウを継承するかたちで、SLOW COFFEEを開業します。

創業メンバーは、僕を含めた20代が3人。しかもコーヒー業界は未経験です。ぼんやり営業していたら、開業準備金は3ヶ月で尽きました。「これはまずいぞ」と、ようやく焙煎担当と販売担当、各々の責任を明確化します。

僕は販売担当だったので、シェフや一般の人に試飲してもらって感想をフィードバック、焙煎に生かしました。当時はフェアトレードのオーガニックコーヒーの黎明期だったため、「有機栽培」と聞いただけで、「ウンチクばっかりで、美味しくない」と決めつける人も多く、試飲してもらうのも大仕事でした。いまではイベントで飲んで、「美味しい」と目の前で言っていただくことが多く、あの苦労も報われた思いです。

また美味しさを焙煎で引き出せるのは、ホンジュラスやエクアドルなど、世界から選りすぐったコーヒー豆が揃うから。「オーガニック」「フェアトレード」はもちろんのこと、僕たちにとって美味しさは重要です。健康や環境面に重きを置きすぎて美味しさが犠牲にされては、リピーターは生まれないからです。

今やコーヒーは日本人にとって、緑茶よりポピュラーな飲み物。「持続可能な社会」というと重苦しいけれど、美味しい一杯を通して、もうひとつの社会のあり方を感じてもらえたら、嬉しいです。

オーガニックかつ、美味しい一杯

厳選した有機栽培豆を少量ずつ、深煎りにロースト。カフェインレスに仕上げて、ドリップ用に挽いてから、バッグに充填する。フレッシュな飲み口。

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- 生産者さん紹介 - 2021年7月発刊 vol.166

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