人生は自作自演の神芝居

生きているといろいろな事がありますよね。まるでこの地球が喜怒哀楽を味わい尽くすテーマパークのように。ぬくぬくと一所に留まる事はなく、次から次へと景色は生々流転していきます。喜ばしい出来事であれば受け入れ易いのですが、それが苦しみを伴う出来事となると、「なんでこんな思いをしなければならないの！」と、自分自身や他者を責めてみたり、境遇のせいにしてみたり。
けれども、魂とのコミュニケーション、自己探求を行ううえで、まず諭らなければならないことは、どのような苦境であっても、その原因は自己の内にある、ということなのかもしれません。
原因が自己の内にあると言うと、これまた「私が何をしたっていうのよ！」と攻撃的に跳ね除けてみたり、自暴自棄に陥ったりしてしまう人も少なくないと思います。けれど、そのようなマインドでは、いつまで経っても堂々巡りで抜けられないトンネルの中を彷徨い続けます。
どんなことであれ人生に起こる出来事は、純粋エネルギーのかたまりである魂（大いなる自己）が、自分自身を救済するために起こしている宇宙劇、自作自演の神芝居なのです。魂とのコミュニケーションができていないと、表層の出来事に翻弄されて、その根底にある大いなる愛の意図が見抜けません。
なぜ私ばかりこんな目に合わなければならないの？
人間がまだできていないから？
修行が足りないから？
出来事をまるで天から降ってきた罰か、もしくは自己鍛錬矯正ギブスのように捉え、「人は苦しまなければ成長しない」「人生は苦行」と思い込んでしまうこともまた、無駄に自分を追い込むことになり、時間がかかってしまいます。
大いなる自己が自分自身に経験を与えるのは、単に苦しめるためではありません。純粋で美しい本来の姿からそれてしまった迷子の自分を、光の世界へと戻してあげたいだけなのです。聖なる欲求を封印したまま偽りの自分を演じながら生きることを、魂は放っておかないのです。
私はそれを『魂の治癒力』と呼んでいます。本質からそれたままの不健康で不均衡な状態のままでは可哀想すぎるから、本来の美しい調和された姿へと修復しようとするのです。そんな自分自身を救済しようとする魂の治癒力は、愛でしかありません。魂の治癒力は、無自覚で生きている表層の自分と、純粋エネルギーである深層の自己との矛盾を、まるで鏡のように人生劇場に見事に映し出します。

抑圧されたインナーチャイルドを救う

ある50代の女性は歯ぎしりと噛み締めに長年悩んでいました。最近、友人からのちょっとした裏切りを受けて、噛み締めがさらに激しくなったそうです。冷静に考えれば大した事ではないのに、どうしてここまで怒りが収まらないのか自分でもわからない。小っちゃな自分が情けないと自分を責めていらっしゃいました。
この出来事から、魂の鏡は一体何を映し出そうとしているのでしょうか。内に隠れたどんな悲しみから、自分自身を救済しようとしているのでしょうか。
退行療法を施してみると、幼少期のお母さんとの関わりが見えてきました。お母さんは娘である自分よりも長男を溺愛し、何かにつけ自分の意思は踏みにじられ裏切られ、悔しくて悲しい思いをずっとしてきていたのです。幼いころのトラウマは未解決のままインナーチャイルドとなって潜在意識下に封印されます。癒されないまま封じ込められたインナーチャイルドの悲しみの叫びが、自分自身に「私に気づいて！私を助けて！ここから出して！」と言わんばかりに、現実に似たような状況を引き寄せ、そのドラマから、取り残されたインナーチャイルドに気づかせようとしていたのです。
大いなる魂の救済の意図を見抜き、受け止めることができれば、表層と深層の傷跡が優しくとかされていきます。では、具体的に退行療法では、どのようなイメージワークを行って、抑圧されたインナーチャイルドを癒し解放していくのでしょうか。

（次号へ続く）