「いま」とは、息する間
学生スポーツを観ていて思うのは、強いチームというのは切り替えるのが実に上手だということ。ミスをしても「ドンマイ!」と声をかけあって、呼吸を整えています。ドンマイとは、英語の「Don’t mind(気にするな)」がなまった和製英語。過ぎたことをクヨクヨせずに目の前のことに集中しようという意味で使われています。 集中力を高めるうえで呼吸を整えることは重要です。呼吸が整えば、姿勢も整う。姿勢が整えば、楽に動けるようになる。スポーツの試合中であれば、姿勢が整うことで、予想外のことにも対処できるようになります。結果として、普段通りの実力を出し切ることができるようになります。 子どもには悩みはない、などと言われますが、純粋であればあるほど「いま」を生きることに長けていると言えるでしょう。過ぎたことを気にすることもなければ、まだ起こってもいない未来を気に病むこともない。ただ「いま」目の前のことに集中する。 大人になって経験を積んでくると、つい過去の記憶から物事を判断するようになり、いま起こっていることを感じることを忘れてしまいがちになります。「いま」とは「息する間」のこと。一呼吸一呼吸を大事にしたいものです。
怪我の功名
スポーツ選手にはケガはつきもの。今年のシーズンもすでにさまざまな競技の選手と関わりました。誤解を恐れずにいえば、ケガをするのは早ければ早いほどいい。もちろん、できるならばケガしないに越したことはないのですが、ある意味、避けようのないものであれば、早期に乗り越えるほうが良いということです。
ケガをして痛みを抱えていても、治療を施せば痛みはある程度は減ります。そこで「大丈夫」とばかりにすぐに動き始めるか、痛みがなくなるまでは「不安」だからとまったく動かないか。そこで、一度は突き放して、痛みがまだ少し残っているくらいで動いてみてもらうようにしています。ある一定の動きでは痛みが増し、ある動きでは痛みを忘れていたりする。その痛みのない動きを、自分で見つけるに越したことはありません。痛みの出ない、つまりはケガしない動きを探し出し、身につけていくことができれば、自然とフォームの修正ができている。ケガをしない動きというのは、実は強い動きであり、リラックスしていて、見ていて美しい動きでもあります。それを早期に見つけ出すことができれば、シーズンの後半を楽に過ごせ、ひいては選手生命をも延ばすことにつながるのです。
シーズンの前半にケガをしてしまった。そのことだけを見れば悲劇かもしれません。でも、それを機にフォーム修正までできれば、むしろケガをする前よりも強くなっていることになります。そして、それを自分で見つけ出すことができれば最強になれるのです。
視点を変える
スポーツ選手のケガに限らず、病気を含め、治っていく人に共通することに、そのケガや病気になる前よりも良くなっていることがあります。病気になった、そして病気が治った、というだけではなく、病気になったおかげで働き方を考えられた、家族との関わりが深まった、生活を見直すことができた……など病気を一つのきっかけとして、もう一段、高いところに上がっていかれるようです。
気づきの過程では、感情が溢れだすこともあるでしょう。ときには泣き出してしまうこともあるでしょう。このときの涙は止めないでね、とお話ししています。涙とは、目を洗い流すために溢れ出る水。せっかくなので、これまでの視界を洗い流して、ちがった見方ができるようになればと考えるのです。曇りが取れて視界がクリアになれば、自然とまた違ったものが見えるようになるでしょう。
こだわりが取れれば、滞りがなくなります。身体の気の流れが整えば、自身の生き方も流れに乗ることができるようになる。自然と、しなやかに生きていきたいものですね。
圭鍼灸院 院長 鍼灸師
マクロビオティック・カウンセラー
西下 圭一(にしした けいいち)
新生児から高齢者まで、整形外科から内科まで。
年齢や症状を問わないオールラウンドな治療スタイルは「駆け込み寺」と称され医療関係者やセラピストも多数来院。
自身も生涯現役を目指すアスリートで動作解析・運動指導に定評がありプロ選手やトップアスリートに支持されている。
兵庫県明石市大久保町福田2-1-18サングリーン大久保1F
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