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楽だから自然なお産~高齢出産編~

出産・子育て・介護家族と向き合ういろんなお話

一般社団法人
日本マクロヘルス協会
理事

望月 索 (もちづき さく)

人一倍不摂生な出版仕事人が37 歳、40 歳、44 歳で出産、育児の経験も積み、健やかな暮らしについて学び合う協会の設立メンバーに。
編集、ライター、一般社団法人日本マクロヘルス協会理事。編著に『子どもを守る自然な手当て』、訳書に『親子で楽しむ!おむつなし育児』、『小児科医が教える 親子にやさしい自然育児』。
http://macro-health.org

羊水から味わっている

投稿日:

今どきの味つけ

暖かくなってきて、ちまたで赤ちゃんをよく見かけます。薄着になって、素肌でいろんなものを感じられる、五感がうれしい季節がやってきます。

五感のなかで味覚について、ベストセラー多数の料理研究家さんから、「スーパーの野菜の味が薄い」のではなく、「味の薄い野菜が好まれるのだ」との説を伺いました。味蕾が知覚する味は苦味、酸味、塩味、甘味、うま味。いまは減塩を心がけるから、減らした塩味をうま味でカバーするようになり、うま味が強い味付けが増えた。うま味や甘味をうまく生かすには、野菜が主張しないほうがいい(例えば、全体が人参の味になると困る)、だからクセがなく味の薄い野菜が好まれる、というわけです。なるほどです。

わが家でお惣菜屋さんの中食が食卓に並ばないのは、手が抜けない性格だからというわけではなく、うま味も甘味も強い味付けが、口に合わないからです。でも、味覚の違いという観点で捉えると、よくいわれる、うま味調味料で「舌がバカになる」には意味がなくて、辛いものが苦手な人がいるように、強いうま味が苦手な人、甘いものが苦手な人、になるのだと思いました。

離乳食を見ていると

離乳食のレシピを見ると、「素材の味を生かす」薄味が基本です。蒸して潰すだけなどでいいのではと思うのですけど、保育園の給食では、初期からだしが使われていました。中期(7~8か月頃)からは砂糖も醤油も使われます。赤ちゃんにしてみると、ある日突然、砂糖と醤油の味が増えるのです。薄味とはいえ、いきなり濃くなり舌がびっくりしそうです。もともと足されていたうま味に甘味が加わり、それらはどちらも脳が喜ぶ報酬系の味。どんどん刺激をのせなくてもいいのでは? さらに年度が変わるとマヨネーズやケチャップも登場します。素材そのものの味を楽しむ方向ではどうしてダメなのか、理由がわかりません。

味をつけないと赤ちゃんが食べない、味をつけると喜ぶ、という話も聞きます。脳に刺激を与えて、どんどん食べさせる必要があるほど、その子はそれを食べなくてはいけないのか?  

今はもう人権配慮で許されないだろう、20世紀初頭アメリカの実験で、赤ちゃんのときから、毎回10種ほどの基本の食材から、欲しいものを欲しいだけ(大人の示唆なく)自分でとって食べるように育った赤ちゃんは、好き嫌いなく、なんでも、そのときの自分に必要なものを選んで食べられるようになった、というものがあります。その次の実験で、加工食品も含めて、好きなものを好きなだけ食べさせるとどうなるか、という計画もあったそうですが、社会状況から頓挫したんだとか。頓挫してよかった気がしますよね。

妊娠中は食事が整っていた、と思える妊婦さんは多いのではないでしょうか。むくみに配慮して塩分を控え、体重のコントロールも兼ねた甘味や脂分のコントロール、栄養バランスのいい、野菜たっぷりの食事。私も妊娠中は、今より健康でした。

お腹の赤ちゃんは、そのときの母の羊水を味わっています。その味の記憶は生まれてからも残るそうです。生まれてからいろんな味を覚えていくものだし、たまには刺激的な味付けで楽しめるような幅もほしい。でも、うま味と甘味を足さないと食べられないようなら、味覚の幅はせまくなっているのでは? 素材そのものって、もっと美味しいはずです。

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