お口に関る筋肉
明けましておめでとうございます。
今回はお口の中の環境についてお話し致します。歯は口唇(くちびる)と舌(ベロ)との間に位置しており、お口の周りにある口輪筋と舌(舌筋)の二つの筋肉がしっかり発達していて、舌の位置が正常位にないと、歯の位置は正常な位置にきません。舌は安静時に上の前歯の裏側の上あごについているのが正常位です。例えば生まれてすぐに赤ちゃんはおっぱいを飲むことで大切な栄養をとります。これは唇と舌と全身を一生懸命使っておっぱいを吸引して筋肉トレーニングをしているのです。何らかの理由でお母さんのおっぱいが出なかったりして哺乳瓶で人工乳を与えなければいけない場合もあります。この時、一生懸命吸わなくても流れ出てくるような哺乳瓶で人工乳を与えてしまうと赤ちゃんにとって大切な筋トレをさぼってしまうことになり、強いては筋肉の発達や使い方に誤りが生じてしまいます。ヒトは霊長類の哺乳動物なので哺乳は大切で、正常な発育にはかかせないものなのです。食事の軟食傾向や飲み物で流してしまう食事の仕方も噛む筋肉を使わないので、最終的には骨の発達が悪くなり歯並びが悪くなる要因をも作ってしまいます。
一昔前は赤ちゃんにおっぱいをあげる母親の姿をあちらこちらで見ることがありましたが、現在は殆ど皆無と言ってよいでしょう。時代が流れ社会の背景が変わり、核家族化が進み共働きが増え、仕事をしながら同じ場所で子育てを出来ない為に、子供さんを預けなければならないなど、色々な環境が関係しているのだと思います。しかし三つ子の魂百までもの諺にもあるように、3歳までの母親とのスキンシップはとても大切です。時代の変化に追従していくことも大切ですが、本当に大切なことを忘れてはいけないと思います。
お口の健康を保つために
お口の中の環境に戻りますが、お口の中は皮膚と違い粘膜でできていて、さらには舌の下には静脈叢があります。ここは沢山の毛細血管が集まっているところで、体内への吸収がとてもよいのです。例えば急激に血圧が上がってしまった時の処置として舌の下に血圧を下げる薬を置いて粘膜から薬効を吸収させることがあります。その位、口の中、粘膜は吸収がいいのです。それを踏まえてお口の中に入れる歯磨き粉などについて考えてみようと思います。よく歯磨き粉はどのようなものが良いのですかと聞かれるのですが、私は実は人それぞれだと思っています。がしかし、舌の下は吸収がよいということを考えると、沢山の化学物質を含んでいるものは健康を考えている方にはあまりお薦め出来ないと感じます。またその視点から考えますと、歯の漂白や虫歯予防のフッ化物利用についても同じで、それらの必要性とのバランスが大切だと言わざるを得ません。お口の中を修復する金属も同じで、年月とともに酸化しイオン化してしまうものは身体に吸収されてしまうのです。本来虫歯予防の第一手段は、精白していない食べ物や砂糖を使わない食べ物を食することや、歯の周りの汚れを徹底して取るということです。フッ素塗布やフッ素洗口はそれをどうしても出来ない方への補助療法としての提案であると私は考えています。その方の生活環境やライフスタイルによる判断と選択が必要です。
本当に大切なもの
人は具合が悪くなって初めて自分の身体と向き合い慌ててそこで何とかしたい、痛みから解放されたいと願います。病を治すのはお医者さんでもなく歯医者さんでもありません。病は、今までの自分をじっくりと見つめてこれからを変えるための気付きを与えてくれる一番身近な警告でありチャンスなのです。自然な生活に戻り食生活を改善し、何が良くて何が悪いのかという鋭い感覚を持ち、ご自分で自らを守ることが、とても大切なのではないかと思います。現在の生活環境の中での色々な矛盾を一つ一つ紐解き、本当に大切なものを大切にした世の中になれば良いなと思います。
今年も皆様のご健康とご活躍をお祈りいたしております。
田中 利尚
田中 利尚氏 歯科医師・整体師 日本抗加齢医学界専門医 国際統合医学界認定医 「咬合(かみあわせ)を制する者は歯科をも制す」という、歯科医学の見落とされている最も大切な力学的調和という根本理論に触れ、かみあわせを追求。しかし身体が変位していると良いかみ合わせを構築できないところに西洋医学の限界を感じ統合医療を目指し東洋医学(整体)を勉強。 顎が痛い、お口が開かない、首肩の凝り、腰痛、うつ病までを含む顎関節症の治療にも取り組んでいる。 「健康は歯から」を確信している。 |