前号では、形成外科医の私が患者様へのお手本を示すためにヴィーガンカフェ『CHOICE』を開業した経緯を記させていただきました。我慢するのではなく、健康に良いものを美味しく楽しく食べるというコンセプトのお店です。今号ではヴィーガンになろうとする方の最後の砦についてのお話をします。
肉や魚は無くても平気。という人でもチーズやバター、クリームは止められないという話をよく耳にします。芳醇な味わいや濃厚なクリーミーさが忘れられず乳製品を欲してしまうのですが、肉や魚と同じか、それ以上に避けたいのが乳製品です。ましてチーズは乳を凝縮させて作るため、普通に乳を飲むよりも乳製品摂取のリスクが上がります。
「美味しいヴィーガンチーズを作りたい」。… … そう思っていたときに、アメリカで参加したある講習会でヴィーガン料理家のミヨコ・シナー先生に出逢います。彼女は、すでに美味しい『発酵』ヴィーガンチーズ(植物性)の開発に成功していて、アメリカの健康意識の高い方たちの話題をさらっていました。私は、「これだ!」と思いました。すぐに、アメリカ中をクッキングデモや講演で飛び回る超多忙な彼女のスケジュールを一週間確保してもらいました。そして、スタッフ数名と共に、アメリカに『発酵』ヴィーガンチーズの製法を学びに行くことにしたのです。
発酵食品の壁
「これで日本でも美味しいチーズが提供できる」。そう確信して帰国しました。 でも、日本でレシピ通りに作っても上手く発酵しないし、頻繁にカビが生えました。アメリカと同じ味にならないのです。それは水も空気も違うカリフォルニアと、京都の気候風土の違いを考えれば当然のことでした。安心して使える材料の解釈に違いがあったり、日本で入手困難な材料を探すのにも苦労したりしました。紆余曲折の商品開発の日々です。 外気の影響を受けず、いつも同じ状態で発酵させるにはどうすればよいか?季節の移ろいが豊かな京都で安定した発酵・熟成を行う方法を考える必要がありました。製法は企業秘密なのでお伝えできませんが、このことを解消したことにより、開発が飛躍的に進みました。
もどきといえばもどきです
アメリカのレシピに日本人の繊細な味覚がプラスされた『発酵』ヴィーガンチーズは「CHOICEFROMAGE(チョイスフロマージュ)」と名づけられました。チーズの定義を「乳」を凝固させたもの。とするならば、もちろん「もどき」ですが、チーズの持つ豊かな味わいは負けていません。
現在、常設で店頭販売している商品は、チーズが4種とバターですが、お店ではもっと多くのフレーバーをお出ししたり、料理にアレンジしています。また、チーズの製法を応用して作った濃厚でミルキーなクリームはケーキやスイーツに使っており、人気をいただいています。
幸運な出逢いと優秀なスタッフに恵まれて生まれたC H O I C E の「乳製品もどきたち」は、ヴィーガンの方にはもちろん、チーズ好きの方からも高く評価され、多くのメディアに取り上げられたり、イベントにお招きいただいたりしながら進化し続けています。
鈴木形成外科院長/ CHOICE オーナー
日本形成外科学会認定専門医・日本レーザー医学会評議員
日本臨床皮膚外科学会理事・京都形成外科医会 会長
第1回ベジタリアンアワード企業賞受賞(CHOICE)
鈴木 晴恵(すずき はるえ)
京都市出身。アジアにおいてレーザー治療をいち早く導入し、シミ、あざなどの数々の治療方法を確立。メディカルエステを考案、定義し、実践してきた。
仕上がりの美しい眼瞼下垂症手術に定評がある。3.11を機に「食」と真剣に向き合い、栄養学を突き詰めた結果、最善の食事法はplant basedwhole foodsと気づく。
クリニックに栄養外来を立ち上げる傍ら食のお手本を示すカフェ『CHOICE』開業。
大学生の娘の母親でもある。
鈴木形成外科 C H O I C E
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