診療していて、ストレスの原因が「本当にやりたいこと」をしていないから、という場合が度々あります。今回は僕自信の経験を振り返りつつ、本当にやりたいことを見つけるヒントについてお話ししたいと思います。
医大に入る前から、病気が治るのであれば超能力でも宗教でも効果があればどんなことでも活用するべきだと思っていました。西洋医学に限定する必要はないのでは? と高校生が「エラソー」に考えていました。医大に入って、生活のほとんどは部活(ラグビー)に費やしていました。ただ、精神世界には興味があり、本を読んで情報を得ていました。一方実際に医学を勉強してみると、その世界はとても広く深く、普通の医学生が感じるように、この西洋医学の世界でやっていくべきではないかと思うようになっていました。同級生と一緒に試験勉強をしたり、入局先を探したりして、結局は普通の小児科医になることを選択しました。通常通りの研修をしながらも、治るためならどんな方法でもいいのでは? という思いはずっと持ち続けていたので、夏休みなどに当時佐賀県立病院好生館東洋医学診療部長であった矢山利彦先生の外来を見学させてもらい、西洋医学以外にも病気を治す方法があることを体験させていただきました。
研修が終って病院で小児科医として勤務していましたが、年々このままで良いのかという思いが強くなっていきました。病院では治る子どもたちがいる一方、難病で入退院を繰り返す子や、不幸な結末をたどる子もいて、治療に悩むこともありました。そういう子どもたちと出会うたびに、このままで良いのかという思いは強くなっていったように思います。そしてある時、仕事中に突然不安感が押し寄せてきて、動悸と発汗、ひどい時は手の震えがでるという症状に襲われました。普通にルーチンワークをこなしている時にも、突然その症状がでることがあり、周りのスタッフに気付かれないように、必死で普通を装っていました。まさか自分に精神症状がでるなんて思ってもいませんでした。精神世界のことを勉強して、心の底では、もうこのまま続けるのはやめろというサインなんだと気付いていました。一念発起して、元の職場を辞め、矢山クリニックに勤務させて頂けることになり、本当にやりたいことをする第一歩をあゆみ始めました。
皆さん、日々の生活で多かれ少なかれ色々なストレスを感じていると思いますが、その中でも大きなストレスの一つは、「やりたいことができず、やりたくないことをしなくてはならない」ことではないでしょうか? 僕自身が精神的に不安定になったのは、このストレスが最も大きかったと後になって気付きました。診察していると、中高校生から、意外にも60歳くらいの方までの幅広い年代の方々が、このストレスを感じている事があります。そして日々の生活が忙しすぎて、自分が本当は何をしたいのかわからないという方が多いようです。
(続く)
山内昌樹
医師 山内昌樹氏 平成19年まで一般小児科医として診療を行うかたわら、統合医療を志しYHC矢山クリニックで小児科を担当。平成22年12月佐賀市内に『統合医療やまのうち小児科・内科』を開院。 医師となってから、重病の患者さんが劇的な回復をすることや子どもの生命力の素晴らしさなどを経験するも、個人差を考慮しない画一的な治療、ステロイド薬や免疫抑制剤の副作用など、西洋医学の限界を感じる。 漢方薬や代替療法と西洋医学を融合して治療を行うYHC矢山クリニックで小児科を担当、病気の真の原因を学び、実際の診療で効果が見られることを経験。 |