元気でいる意志

「いつも元気でいてくれて、ありがとう」。患者さんからこんな声をいただくと、嬉しいものです。自分が元気でいるだけで、だれかの役に立てる。こんなに有難いことはありません。

治療院ですから、どこかが弱っていたり、しんどかったりする人たちが来られます。元気な者が弱っている人に優しく接するのは当たり前のこと。元気なときに人を気遣うのは難しくはないでしょう。元気でないときにも同じことができるか。自分がしんどいときに相手に気づかれないでいられたら、素敵だなと思います。

「医者の不養生」ではないですが、不摂生をしてしまうことだってあります。年に一度や二度くらいは風邪だってひきます。親戚や身近な人の訃報で悲しい日だってあります。「ご自身がしんどいことはないんですか」と尋ねられれば、「ありますよ」と即答します。そりゃそうです。生きているとはそういうことですから。ただ、しんどいことにも左右されない自分でありたいとは思っています。

いい人の条件

物事がうまくいっているときに「いい人」でいられるのは当たり前。病気や不運に見舞われて、それでも周囲に心配をかけまいと明るく振舞える人は、その時点で不運に勝っているか、少なくとも共存ができている。状況に左右されてはいません。そういう人は困難を乗り越えていけるのでしょう。

自身の健康状態、置かれている立場や状況、周囲の環境など、常に変化するものです。愚痴や言い訳など、しようと思えばいくらでも見つかります。愚痴や言い訳は、状態・状況・環境といったものに自分が左右されている証と言えそうです。

状況が変われば、能力は発揮できる。そう言い切るのは、状況に振り回されていると宣言しているようなものです。自分が左右されるほどに、その状況のほうが大きいということです。ちっぽけな自分をさらけ出していると気づいても、同じような愚痴が言えるでしょうか。

例えば、「今やっていることがつまらない」という愚痴を耳にします。そこで「やりたいことをやろう」と声かけする人がいます。「やりたいことをやろう」という言葉の影響で、入った会社をすぐ辞めるとか、部活を辞めてしまう学生は少なくないでしょう。やりたくない、向いてないと辞めることは、選択肢の一つには違いありません。他にもたくさんの経験ができて、向いていることが見つかったり、恵まれた環境に巡り合ったりすることもあるでしょう。
だけど、「やりたいこと」が見つからなくて悩んでいる人もいるはずです。そこには、「やりたくないことを、心からやりたいことに変化するまでやり続ける」という選択肢もあるはずです。安直な「やりたいことをやろう」という言葉のせいで、才能の芽が摘まれてしまうこともあるような気がします。

どんな状況にあっても、一旦は脇に置いておいて、いま・ここ、目の前のことに集中し、自分がすべきことをする。それが大切でしょう。

本物の輝き

禅の言葉に、「真玉泥中異（しんぎょくでいちゅうにいなり）」とあります。本物の玉（宝石）は泥の中にあってもその輝きは失われないということ。真の玉は泥の中でも異彩を放つ。輝きも才能も環境で変わるものではないということです。どんな環境にいようとも、周りに惑わされず自分らしくいることで、そこで輝くことはできるはずだということ。どこにいたって輝けるのが真の実力とも言えます。

もう少し言えば、石は輝こうとして輝いているのではありません。ただそこにいるだけで輝いて見える。自分の本質とは、周囲から見えている姿そのものということです。

環境に感謝し、ご縁に感謝し、輝いていられたらいいですね。