新商品のしそジュース。その原料は、滋賀県大津市の比良で、里山保全の一環として育てられました。この地で里山保全活動を行う比良里山クラブ代表、三浦美香さんにお話を伺いました。
―比良のこの地を選ばれた決め手は何だったのでしょうか。
比良里山クラブ 代表 三浦 美香氏
私がここの出身というのは大きかったですね。
活動を始めた1年目は、休耕田を借りたんです。最初は主婦の集まりで、シソは獣害に遭いにくいというので量産できるかテストしてみたんです。そしたら見事に出来た。でも後で訊いたら、休耕田って肥料分が残ってるんで、よっぽど下手なことをしない限り、何でもだいたい育つらしいんですよ。その次の年はゲリラ豪雨の洗礼を受けて、違うところにまた農地を借りたんです。そこは本当に山際で、そうすると鹿が通って、つまみ食いするんです。だから柵とかで防いで。2年ぐらい借りました。
今の圃場は兄が元々お米を作ってた田んぼだったんですけど、最終的に戻ってきました。最初からここでも良かったのかもしれませんが、身内だけでもやっても広がらないし、私としては段階を踏んで、ホームグラウンドに帰ってきたっていう感じです。
―赤じそで商品を作るきっかけは何だったんでしょうか。
赤じその商品化を考えたのは4年前、今年(2014年)で5年目です。最初の年は350本しかなくて、今年はやっとある程度の量が出せるようになってきて、待ってたんですといってもらって、ありがたいなと。
商品を流通させたいというのは最初からあったんです。そこまで頑張らないとというのもあったし、待っていてくださるお客さんがいっぱいおられるんで。物ができるというのは、分かりやすいんです。関わっている人にも、周囲の人に対しても、看板になります。そういういい効果を確実に生んでくれますね。
―シソを育てる上で大変なのはどのような点ですか?
シソはだいたい9月になると花芽が出てきます。日照時間が関係していて、日が短くなると花芽をつけたがるんですね。花をつけると葉に栄養がいかなくなります。だから、葉の収穫は大体お盆までです。
シソは好光性種の短日性植物で(※)、日の光がないと全然大きくならないんです。春に低気温とか日光不足だと発芽が遅れますし、やっと発芽しても大きくならなかったり。毎年いろんな事があります。露地栽培だから余計ですね。
あとは、除草ですね。ほとんどはマルチを使って抑えますが、溝の草を放っておくとどんどん大きくなって、水の流れが悪くなるし、栄養も取られてしまうんです。※好光性種=光を発芽の条件とする種子/短日性植物=日長時間が短くなると花芽を形成する植物。
―ハウス栽培より露地栽培の方が良いですか?
シソ畑の周囲に広がる風景。
自然の力で出た苗の方が成長が早いですし、良い苗があります。この比良の空気と水と土の力ですね。人工的に一生懸命育てようとしているところに、ほったらかしの苗がぐんぐん大きくなる。裏切られた感じですが、やっぱりすごいなあと思います。人間の知恵の浅さというか、野生ってすごいですね。そういう種が残っていて、何かのタイミングにガッと出てくるんですね。うちのシソはそういうシソです。100%自家採種です。
―農薬・化学肥料は使っておられないんですよね?
豊かな環境の中で赤しそが育まれています。
はい。肥料は、オリジナルでブレンドしています。近所の鶏舎から鶏糞をもらって、それに油粕などをブレンドして発酵させたものを、薄めて使っています。あとは元肥といって、植え付け前に牛糞と鶏糞とブレンドしたものをまいてこなしたりもします。
この圃場は、山から最初にダイレクトに水が来る場所なんです。他の農地を経由してくることがないので、本当にキレイな水が豊富に入ってくるのでありがたいです。
―シソは獣害に遭いにくいようですが、ほかの農作物の獣害は変わらず多いのでしょうか?
鳥獣害が多くて、近年カラス害が増えています。鳥はネットで防ぐしかないです。それぞれの対策が要るんですよ。鹿のフェンスをしてもウサギが入ってくるし。猿も、群れで来ます。どんなに囲っても電気柵をしても猿はどうしようもないんです。上からでもどこからでも来ますから。一番効果があるのは人間なんです。子どもの声がするとか、人の匂いがするとか、彼らはまだ警戒する。この辺りは人がおそわれたという被害はないですね。追い払うとほんまに嫌そうに山に帰っていくんですよ。やっぱり一線引いてもらわないと、というところです。
―作業は何人ぐらいでされているんですか?
シソ里山の活動で使う広場。休みになると子ども達も多く訪れます。
ボランティアさんが結構多くて、30人ぐらいです。面白いのは、うちは正会員が片手ぐらいしかいないんです。会員何名とかの方がかっこいいし、世間ってそこらへんではかるところがあるんですね。でも、分かってくれる人は分かってくれるんで。
ボランティアさんは近所の人が増えてきて、子どもはまだ小、中学生だけども、何か手伝いますっていうお母さんが多いです。あとは薪ストーブが増えてるんで、薪を調達したいという40代、50代の男性とか。しかも地域通貨的な感じで、労働の対価として薪とかしそジュースとかで、全然ありがたいっていう。そういう人がどんどん増えてきてくれるっていうのはありがたいですね。
<らくなちゅらる通信編集部>