私のクリニックでは分子整合栄養医学※に基づく栄養外来をおこなっています。一般的には治らないとされている疾患や病気と診断されない不調の原因を見つけ、根治を目指す指導をおこなっていて、主に湿疹、にきび、アレルギー、不妊などの相談に多くの患者様がいらっしゃいます。たとえば、アトピー性皮膚炎の湿疹にステロイド剤を処方し一時的に症状を抑えても、それでは根治はありません。湿疹の原因は食べ物だったり、ハウスダストだったり、もしかするとストレスかもしれません。通常、原因はひとつではありませんので、丁寧にカウンセリングをおこない、食事や環境を見直すことにより症状を改善し、根治を目指します。
分子整合栄養医学といえば、とにかくサプリメントを処方する治療法と誤解されがちですが、私のクリニックでは根気強く生活習慣の指導をし、食事で予防し治療することを目指しています。
合理的かつ安全なものだけ
そんな私のクリニックでも、ビタミンC、オメガ3脂肪酸、そしてコエンザイムQ10の3つについては、すべての人に安全であり、かつサプリメントで摂取するのが合理的だと考えて患者様にお勧めしています。ビタミンCとオメガ3脂肪酸については、その必要性が広く知られてきていますので、本稿ではコエンザイムQ10をお勧めする理由を説明させていただきます。
コエンザイムQ10は元々体内で産生され、体中に広く存在する成分で、ミトコンドリアの中で生命活動に必要なエネルギーをつくり出す際に必須の補酵素です。また強い抗酸化作用があり、ストレス・紫外線・喫煙・過剰な運動などが原因で増加するといわれる活性酸素によるダメージから体を守る働きがあります。体内のコエンザイムQ10の量は20代にピークを迎え、40代以降急速に減少するといわれます。年をとると疲れやすい、同じ生活をしているのに太った、そして肌の老化や免疫力の低下、肩こりや冷えなどもコエンザイムQ10の不足が原因である可能性があります。
コエンザイムQ10の一日の摂取目安量は、60~100ミリグラムとされていますが、食べ物で100ミリグラムのコエンザイムQ10を摂取するためには、含有量が多いとされるにしんで約40匹(1匹当たり約150グラム)、牛肉で約2・7キログラム以上、えんどう豆なら約30キログラム以上必要で、食事から十分に補うことは現実的ではありません。コエンザイムQ10についてはサプリメントから摂取するのが効率的です。
必須のケースもあります
高コレステロール血症の内服治療をしている方はさらに深刻です。コエンザイムQ10が合成される過程はコレステロールが合成される過程と共通しています。高ステロール血症の治療薬は、この経路を調整してコレステロールの体内合成量を減らすのですが、同時に体内のコエンザイムQ10の合成量も減少するのです。高コレステロール血症の内服治療をしている人には同時にコエンザイムQ10を処方するべきなのですが、指導されていない場合が多く、この疾患をおもちの患者様に意識的にコエンザイムQ10を補充しているか尋ねると、そもそもご自分が一般の人以上にコエンザイムQ10の摂取が必要であることを知っている方が少ないのが現状です。
選ぶ際に注意すること
コエンザイムQ10には酸化型と還元型があり、酸化型は体内で一度還元型に変換して利用するというプロセスが必要で、還元型より利用効率が悪くサプリメントに含まれる量をそのまま利用できるわけではなく、結果的に効果を実感しにくい場合があります。コエンザイムQ10サプリメントは還元型を選ぶことが大切なポイントになります。
※分子生物学を重点におき、体内に正常な分子バランスを作りだす、ライナス・ポーリング博士が提唱した医学