同じネガティブな体験をして、パニックになる人がいればそうでない人もいます。それらの違いは、過去に同じような状況で心に傷がついたかどうかにあるようです。恐怖や不安、寂しさは、過去のできごとを思い出した「恐怖、不安、寂しさ」で、トラウマの記憶が原因なのかもしれません。
大人でも事件や事故、災害、戦争があるとトラウマになる場合があります。子どもの心はもっと傷つきやすく繊細です。特に親(母親)の態度や感情に大きく影響を受けます。親の怒った顔や無関心な顔、暴力、心無い言葉など、わかってもらえなかったという気持ちなどがトラウマの原因になる場合があります。
トラウマを体験すると「もう二度と同じような体験をしないように」と脳と体が自然に反応するようになります。その反応として、緊張や肩こり、頭痛、冷え性、慢性の病気、眠れない、眠りの質が悪いなどさまざまな症状が起こります。
また、トラウマは性格にも影響します。例えば、合理的に考えれば、Aを選ぶほうがよいとわかるのに、トラウマのせいでついBを選んでしまったり、子どもにたいして怒ってはいけないと思っているのに、気づいたら怒ってしまっていたりします。このような経験をしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。トラウマの記憶のフラッシュバックが、多くの苦しみの原因になっています。
フラッシュバックの3点セット
まずフラッシュバックが起きているということに気づく必要があります。映像でハッキリと噴き出てくるフラッシュバックもあれば、感情だけが湧いてくるものもあります。記憶に残っていないのに、なにかモヤモヤするということもあります。フラッシュバックは、トラウマの記憶を「思い出す」ではなく、「突然湧いてくる」「噴き出す」という感覚に近いようです。フラッシュバックに気づいたら、すかさず次の3つを意識してみましょう。一つずつ練習することで心に余裕が生まれ、できるようになっていきます。
1「この記憶は今起きていることじゃない」と意識する
私たちが生きているのは、今この瞬間だけです。今ここにはなにも問題はないと気づきましょう。
2「今、これ(トラウマの記憶)を感じているんだなぁ」と繰り返す
フラッシュバックの後には必ず「あのせいでこうなった」「自分がもっと〜できていたら」といった原因追求や反省、後悔などの思考の嵐が続きます。この言葉をくり返し唱えて「以上おしまい! もう考えない!」と思考の嵐を止めましょう。
3「あれで良かった」と思うようにする
強いトラウマを「良かった」ことにするなんて到底できない、と思うかもしれません。それでもぐっとこらえて「あれはあれで良かった」といってみましょう。フラッシュバックの正体は、過去の記憶とそれにくっついているネガティブな感情です。つまり、体験をネガティブにとらえていることが原因の一つなのです。どんなネガティブな体験でも、プラスの意味づけをして、中立な記憶に書き換えてしまいたいのです。例えば「あの経験のおかげで今の自分がある」「同じような体験をした人に共感してあげられる」など。そうすることでフラッシュバックを、良いも悪いもない中立な記憶に書き換えられるようになります。
3つの対策でフラッシュバックにある程度対応できるようになったら、最終段階はその記憶を他の人と共有しましょう。話すときは、安全な人・安全な場所を選びましょう。自分の弱い部分をさらけ出すようで、とても勇気が必要ですが、他者に共感してもらえると、大きな癒やしが得られます。話すことが苦手であれば、SNSや日記に書くだけでも効果はあります。たくさん自己開示ができると、一人で背負っていた「苦しさという大荷物」をみんなに分担して持ってもらうことになり、どんどん楽になっていくでしょう。