プレマシャンティの『萬福精進白だし』の生産者日東醸造株式会社の蜷川洋一社長に開発秘話や、碧南の白醤油文化について伺いました。
日東醸造は、白醤油発祥の町・碧南で、祖父の代から白醤油をつくってきました。この地域は、大豆と塩だけで作る豆味噌の文化。代表的な銘柄が八丁味噌で、その豆味噌が仕込まれた桶に溜まった液体が「たまり醤油」の始まりです。ゆえに、たまり醤油は大豆でできています。うまみが強くおいしいのですが大豆100%なので料理が黒くなるのです。
白醤油が登場してくるのは、かなり後のこと。小麦で仕込んだ金山寺味噌に溜まった液体が、色が薄いのに醤油のような風味があった。これが白醤油の始まりといわれています。以来、主に、料理人さん用のお醤油として作られてきました。家庭でも、普段は、たまり醤油、おせち料理など鮮やかなハレの料理を作るときに、白醤油が使われてきました。たまり醤油と白醤油。碧南は、両極のお醤油が作られてきた非常に面白い地域なんです。
先代は昭和の終わりに、白醤油の手法を見直しました。小麦95%、大豆5%という比率で麹を作るのですが、戦後、気づけば小麦と大豆はすべて輸入になっていた。
昔は、碧南には塩田があり、塩も地元産のものを使っていたはずですが、専売法の影響により変わっていった。先代は、碧南で生まれた伝統的な白醤油作りを復興させようとしました。その原点回帰の思いを僕も引き継ぎました。
醤油は、まず麹を作り、塩水と合わせて桶に仕込みます。白醤油は、麹1対塩水2の比率で仕込むのですが、その比率を1対1にして塩水を半分に減らしてみました。お醤油の量が半分になるものの、味が濃くなり、おいしくなるだろうと。しかし、色まで濃くなってしまった。では黒い色をつける要素の一つである大豆をやめ、小麦100%麹にしてみたらどうだろうか。こうして「しろたまり」が生まれました。
材料は、すべて国産に戻しました。現在、小麦は愛知県産100%、塩は「海の精」を使用。仕込みの水についても考え直していたころ、縁あって豊田市大多賀町、当時の足助役場の助役と知り合い、井戸を紹介してもらい、初めて峠から見た風景で、心を決めました。仕込み蔵を移したことで、水と環境が変わりました。海抜10mの碧南に比べ、足助は標高720m。気温が低い方が着色の進行が遅くなるので、白い醤油を作るにはありがたいのです。
この景色を見て、仕込蔵の移転を決めた。
新しく味を作り出す商品開発は楽しい仕事 精進白だしは苦労しました(笑)
動物由来の原料を一切使わない『萬福精進白だし』は、担当の横山さんからの熱い希望があり、「やりましょう!」と簡単に言ってしまいました。
実は、うちの会社は業務用の仕事がメイン。レストランチェーンさんの専用のソースや、うどん屋さんのつゆなど、オーダーメイドで調味料を作る仕事が多いんです。ところが思いのほか時間がかかりました。鰹節を使わないのはいいのですが、その代わりに、どんなだしを組み合わせ、どうやって味をつくればいいのか、簡単にいかなくて。きのこを数種類購入し乾燥して煮出してみるなど、いろいろ試してみたが、なかなかおいしくならない。久しぶりに苦労しましたね(笑)。
ポイントになったのは、切り干し大根。独特の風味の煮汁ですが、煮物などにうまく活かせる。煮炊きに使うと、その良さが非常にわかりやすいと思います。
開発の仕事は、担当者は大変ですが、新しい味を創り出すことは非常に面白いです。
『萬福精進白だし』、ぜひ、みなさんに試してもらって、いろいろなレシピを考えていただけたらうれしいです。