過去に受けたこころの傷などのトラウマが、いまの自分の苦悩につながっていることがあります。例えば、トラウマがあると「あのときのつらい気持ちを二度と経験しないように」という防御反応から、がんばり過ぎたり、こだわりにとらわれたり、本当にやりたいことができなくなったりします。トラウマを癒す方法のひとつとしては、以前紹介した「あのときは辛かったね、辛いのによくがんばったね、がんばった私ってえらいね」という言葉があります。それらを繰り返し唱えることで、自分自身に寄り添うことができます。過去のトラウマの経験をねぎらい、自分で自分を思い切り褒めてあげましょう。
この言葉はインナーチャイルド(過去に傷ついた自分のこころ)を癒やす言葉になっています。実践すると気づくのですが、この癒やしでトラウマが解消したと思っても、別のこころの傷が浮かび上がってくることがあります。一つ消してもまた一つと次々と浮かび上がり、キリがありません。僕自身の経験では、大きなトラウマがいくつか解消することで、そこそこの満足感が得られました。そして、なにか苦悩が出てきたら、そのときにトラウマを解消すればいいやという自信がついてきます。
トラウマの解消を続けていて気づいたのですが、私たちはみんなこころが傷だらけで、日々傷つき続けていることです。子どものころは辛いことがあれば泣くことができましたが、大人になるとそれができません。みんな我慢していることだからと傷に気づかないふりをしたり、別の強い刺激(ギャンブルやアルコールに依存、甘いものや辛いものなど刺激のある食べ物を好む、自虐や他害など)によって傷を誤魔化すことで、なんとか日々を過ごしています。
しかし、そのために失ってしまったものがあります。ふわっふわでやわらかい優しいこころや、小さなことで感動できる気持ちです。ユーミンの『やさしさに包まれたなら』という曲はまさにこのことを表現しています。静かな木洩れ日や、雨上がりのクチナシの香りに感動できる、子どもの豊かな感性を歌っています。大人になってしまった私たちのこころにも、このふわっふわのこころが奥底に存在しています。ふわっふわで傷つきやすいので、この大切なこころを傷つけないように、強がってみたり、だれにも文句を言わせないように努力してみたり、もうどうにでもなれと自暴自棄になってみたり、どうせうまくいかないとひねくれてみたりしてしまいます。そんなことをしている間に、ふわっふわのこころでこの世界を感じることを忘れてしまいました。感受性に蓋をしてしまったのです。前号で紹介したネガティブを全部出し切る方法は、ふわっふわのこころを取り戻すとても良い方法です。また読み直してみてください。
過去のこころの傷を癒やすことも大切ですが、今、まさに傷ついているこころに気づいてあげることも大切です。自分のこころの奥にある、ふわっふわのこころに「今どんな気分?」と、何度も尋ねてみましょう。もしなにか応えのようなものを感じたら「そうだよね、わかるよ」と優しく応えてあげましょう。それがネガティブな内容であっても「そう思ってしまうよね」と同意してあげましょう。このワークはホ・オポノポノ(伝統的なハワイのヒーリング法で、こころの浄化を目的とした祈りのようなもの)に通じていると思っています。ホ・オポノポノでは常に「ありがとう、ごめんなさい、ゆるしてください、あいしています」と唱えて自分自身をクリーニングし続けることを勧めています。インナーチャイルドに対して、いつもこころの傷に気づかないふりをしてごめんなさい、ゆるしてくださいと言って、閉ざしたこころを少しずつ開けましょう。ふわっふわの「優しさに包まれたら、目に映るすべてのことが宇宙からのメッセージ」になります。