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ながれるようにととのえる

身体の内なる声を味方につけて、生きる力をととのえる内科医、鍼灸をおこなう漢方医のお話

やくも診療所 院長・医師

石井恵美 (いしいえみ)

眼科医を経て内科医、鍼灸をおこなう漢方専門医。漢方や鍼灸、生活の工夫や養生で、生来持っている生きる力をととのえ、身体との内なる対話から心地よさを感じられる診療と診療所を都会のオアシスにすることを目指す。
やくも診療所/東京都港区南麻布4-13-7 4階

小さな幸せに気づくこと

投稿日:

80代の患者さんが自転車に乗っている際に自動車と接触事故に遭った。その際、骨盤を3か所骨折し、左手と左足も骨折した。入院して1週間後に見舞いに行ったが、思いのほか元気で驚いた。

4か月ほど入院していたが、手術はしなかったようだ。手術は、骨がくっつきやすくなるように助けることだ。この方は手術の助けなしで自己の治癒力だけで回復した。今ではバスや電車に乗って移動したり、買い物に行ったりして、一人でも問題なく生活できているそうだ。それにしても、この方の回復力には驚かされる。

最近、この方が「今は癌になる人が二人に一人だから、とても心配だ」と言っていた。世間ではよく聞く話なので、心配になる気持ちもわかる。しかし、すでに驚くような回復力を発揮しているのに、そういう心配をしてしまうのは、自己の治癒力が働くのが当たり前になりすぎて、そのすごさに気づきにくくなっているのかもしれない。

生きていること自体、すでに自己の治癒力や生命力を働かせている。例えば、不意になにかで手を切ったら、絆創膏を貼るが、絆創膏が傷を治すわけではない。傷口が治るのは自己の治癒力のおかげである。しかし、本来発揮できるはずの自己の治癒力が発揮しにくくなることもある。それは、例えば、糖尿病や高血圧、悪性腫瘍、動脈硬化、慢性的な炎症などの症状がある場合や、漢方の概念で「瘀血」という血液の滞る状態である場合だ。だから、自己の治癒力を発揮するためには、毛細血管の流れが良好であることが一番肝心である。

すでにあるものに目を向ける

別の患者さんで、 50代のときに心筋梗塞と弁膜症になり、心臓の弁の置換術をして 10年以上経過した方がいる。最近、その方が「活力が以前よりもなくなっているのが気になっている」と言っていた。困っている症状はいくつかあるものの、それでも毎日数時間ジムでウエイトトレーニングをしている。大病したにもかかわらず、思うようにやりたいことができる生命力を発揮していると感じる。しかし、本人は、今の自分に満足できない様子である。

患者さんたちの話を聞いていると、今ないものを必死で探してしまっているように思えてくる。私たちは、すでにあるものに目を向けることがなかなか難しいのかもしれない。ないものを憂うのでなく、目の前にすでにあるものやことに感謝することができれば、日々のなかに小さな小さな幸せが溢れているのを感じることができるのかもしれない。それが自分の生命をまっとうするということなのだろう。こんなふうに、日々、患者さんたちの困っていることを聞いていると、生きるうえでの大切なヒントを教えてもらっているように思う。

見方を変えてみる

また、「年を取ることは、悲しいことでネガティブなことだ」ということをときどき聞く。確かに、年を取ると、できることが限られてくる。しかし、見方を変えれば、より目の前の今を必死に生きることができるということでもある。それは、よりイキイキといまここを生きるというマインドフルネスの状態に、自ら至っているとも捉えることができるのかもしれない。

「諦める」という言葉はネガティブな意味で使われることが多いが、その語源は、「明らかに観ること」だそうだ。「諦める」ことで、現実をありのままに捉え、本来の自己を真っ直ぐに観ることになるのではないだろうか。

『今日、誰のために生きる?』という本のなかに、「年を重ねれば重ねるほど、完璧になっていくんじゃないんだよ。人は、年を重ねれば重ねるほど、人間らしくなっていくんだ」という言葉を見つけたときに、なんだかほっとし、年を重ねることを楽しみに感じた。

- ながれるようにととのえる - 2024年7月発刊 vol.202

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