夜遅くに洗い物をしたり、洗濯物を片付けたり、持ち帰り残業をしたりして、気づいたら寝落ちしていることはありませんか? それらは危険信号です。人に尽くしたり、気を使ったり、迷惑をかけないように気をつけたりして、だれかのためにエネルギーを使いすぎて疲れている人がたくさんいます。他人や家族のためにがんばりすぎて、自分の時間がまったくない状態です。
できる人や気が利く人でいたい、だれかに認めてもらいたい、迷惑をかけたくない、機嫌を損ねたくないなど、がんばる理由はさまざまです。しかし、エネルギーが余っているならまだしも、余力のないなかでがんばり続けていると、いつか病気になってしまいます。そこで、今回はがんばりすぎをどうやったらやめられるのかについて解説します。
私たちは子どものころに「宿題が終わったら遊んでもいいよ」と言われてきました。これは言い換えると「遊びを人質にして、取り戻したいなら宿題をしろ」ということです。親も宿題をさせることに必死なので、こう言うのは仕方がないと思います。本当は「なんのための宿題なのか?」「本当に必要か?」と考えるべきです。働き方改革で大人は残業を減らそうとしているのに、子どもには宿題(残業)をさせるという矛盾が生じています。「宿題が終わったら遊んでもいい」は「やらなくちゃいけないことが終わらないと、やりたいことをやってはいけない」という思い込みを生じさせることがあります。
患者さんに「正しいほうより好きなほうを選びましょう」と伝えています。正しいほうとは、「〜するべき」と思ってやっていることです。好きなほうとは、心や体が心地よいと感じることです。正しいほうは、他人のためにやっていることです。好きなほうは、自分のためにやることです。正しいほうは、きちんとやらなければと思ってやることです。好きなほうは、やりたくてやることです。正しいほうは、やればやるほどエネルギーが消耗します。好きなほうは、やればやるほどエネルギーが活性化して増えていきます。
完全に好きなほうだけを選択するのは難しいですが、少しずつでも好きなほうを選択するように意識しましょう。まずは先にやりたいこと(好きなこと)を短時間でいいのでやりましょう。そして、やらなくちゃいけないこと(正しいこと)をがんばりましょう。そして、疲れたら再びやりたいことを短時間やって、次にやらなくちゃいけないことをがんばる、というサイクルを意識してやりましょう。
正しいほうより好きなほうを選ぶときの最大の問題は、罪悪感です。正しいほうより好きなほうを選ぶというのは言い換えると「さぼって遊ぼう」です。そう言われると「そんなことしてはいけない」と思いませんか? この罪悪感を取り除くのが難しいのです。
罪悪感を減らすために思考実験をしてみましょう。なんのために生きていますか?と聞かれたらなんと答えますか? 普通の感覚で答えるなら「幸せになるため」ではないでしょうか? 幸せになるために今我慢して将来に備える、というのが多くの日本人の考え方です。僕も以前はそう思っていました。でも、もし今すぐに幸せになれるとしたら、その我慢はなんのためですか?
今すぐに感じられる小さな幸せを感じてみましょう。美味しいお茶を飲んだり、大好きなスイーツを食べたり、ゴロンと寝転がったり、楽しい動画を見たりしてみましょう。もし罪悪感が湧いてきても、あえて「幸せだなぁ」とつぶやいてみましょう。少しでも幸せを感じられたら成功です。それは小さな人生の目的達成です。その小さな目的達成をいくつも積み重ねましょう。やらなくちゃいけないこともやりながら、好きなことを諦めずにやり続けましょう。罪悪感が外れたとき、大きな解放がやってきます。