プレマシャンティやマクロヘルスの原料で使っているケールは長野県の信州青木村産。標高約600メートルに位置し、年間気温や昼夜の寒暖差が大きく土壌が豊かなのが特徴です。農薬や肥料を一切使わずケールやヤーコンなどの野菜を育て、それらの加工品などの製造販売をしている株式会社よしとも代表の宮入氏に、想いを伺いました。
「当初は肥料に地元の養鶏場の鶏糞を使っていましたが、それでは自分で完結できないと感じていました。自然栽培なら自分で完結できる。これこそ持続可能だと気づきました」と話す宮入氏は、現在、村会議員2期目。楽しいことを全力でやるのがモットーだそう
小さいころ、この青木村で暮らしていましたが、農業には興味はありませんでした。京都の大学に進学して卒業後は大阪の医療機器メーカーに就職。しばらくして東京に転勤になり、その後、総合電気メーカーのIT系部門の営業に転職しました。当時の趣味がスキーで、冬になると金曜日に羽田空港から北海道に行くという生活でした。数年後、新潟のスキー場に車で通うようになりました。すると、ちょうど長野県が通り道になる。実家を素通りしていることになにか罪悪感めいたものを感じるようになってきて、帰りに立ち寄るようになりました。実家は兼業農家で、父はヤーコンを育て、道の駅で売り始めていたころでした。そのうちジュースやお茶などヤーコンの加工品を作るようになってきた。そんな父の姿を見ていて興味が沸きました。僕は父にインターネット通販を勧めて、ホームページを制作。父には発送作業だけしてもらって、東京で働きながら顧客と入金の管理など手伝うことにしました。関わっているとそっちのほうがおもしろくなってきた。企業の仕事もおもしろいけれど、自分がやりたいことができる仕事ではないので。そのうちだんだんいろいろ口出ししたくなってきて(笑)、自分で作って自分で売ろうと、約13年前に会社を辞めて長野に戻りました。農家になりたいというよりも、「農産物を育てて、なにかを作りたい」と思っていて、それを追求したいという気持ちがあった。それがきっかけです。
今も気持ちは「農家」ではありません。作りたいものがあって、そのために農産物を育てているという感覚です。ヤーコンもケールも、たくさん作っている人がいれば、そこから仕入れる方法もありましたが、そんな農家が当時はなかったのです。
最初はヤーコンの加工品を作っていました。とても健康にいい野菜なのに、いまだにメジャーではない。当時、いろいろなマーケットに出店していましたが、ヤーコンなんてだれも知らない。わからないものは売れないんです。では、どういう人たちならヤーコンを求めるのだろうかと。そのころ、ちょうどローフードが日本に入ってきた時期で、あるローフード学校の先生のなかで「ヤーコンシロップがいいらしい」とネットで伝えている方がいらっしゃったんです。こういう人たちなら育てたヤーコンを使ってもらえるのではないかと考え、そのローフードの学校に連絡して、共同開発することになりました。ローフードなのでシロップも「生」で作れないかということになりました。薬品を作るとき製造過程で、温度をかけると薬効が落ちてしまうことがあるため、温度をかけないで濃縮する技術があるんですね。その機械を使って、かなりの金額をかけて作ってみました。それを機に、僕もローフードに関心を持つようになりました。顧客のことを知らずに売ることを疑問に感じ、自分も勉強しようと思いました。ローフードではスムージーばかり飲むんです(笑)。僕が通っていたときも朝・昼・晩スムージーを飲むという教室で、生のケールの葉をスムージーに必ず入れる。当時は青汁に使われる分厚くて苦いケールが百貨店で千円以上の価格で売られていた時代で、それを喜んで使っていた。でも、「アメリカで飲んだケールはおいしかったのに、日本のケールはなんでこんなに苦いんだ」とローフード仲間も疑問に思っていたようで、ケールを栽培してほしいと頼まれたんです。僕もおいしいケールを作ってみたいと思いました。実際にケールを育ててみたら、色は薄いけれども、すごくおいしくて瑞々しいケールができました。ちょうどそのころ東京でジュースバーなども流行り始め、日本で初めてコールドプレスジュースを始めた老舗のジュースバーが扱ってくれるようになり、「このケール最高!」と、とても喜んでくれた。そこから広がりました。でも、ケールも葉物野菜なので、天候にすごく左右されてしまう。生産量と実際の出荷量がマッチしないことがあって、そういったときのために、パウダーに加工するとか、ケールチップスにするとか、栽培したものを使い切るような方法を生み出してきました。ケールチップスは、ローフードの授業で必ず登場します。オーブンを使わず乾燥機で作るんです。それを習ったときも、日本製のものは売っていなかったので、商品として作ろうと思いました。うちにはドライヤーコンを作るために乾燥機があったので、海外のレシピを参考にしながら作り始めました。
まだ、だれも作っていないものを生み出すことは、大手の企業では得られなかった楽しみです。「だれも作っていないものを自分で作った!」ということが、僕にとって最高の喜びでありモチベーションです。これからプレマさんで扱ってもらうことになっているポップコーンは、なんとヤーコンシロップが主原料。コーンよりもヤーコンシロップを使っている(笑)。ポップコーンは弾けてしまうので、その重量と使うシロップを比較するとシロップのほうが多くなってしまいます。商品ラベルの原料には最初にヤーコンが記されてしまうだけなんですが、ちょっとおもしろいものを作っちゃったなぁと思っています。そういう健康にいい素材でこれまでにない新しいものを作る。そして、それを求めている人がいるのであれば本当にうれしいです。