2017年にも登場していただいた杉山ニット工業代表の杉山浩之氏。EMーXの波動を糸に定着させ、大きく編んで蒸気で適正なサイズにするなどの工夫をして、機能性、履き心地、耐久性を追求してこられました。お客様からの問い合わせが絶えないほど人気の杉山ニットの靴下。どんな想いで作ってこられたのか伺いました。
「『糸がいい、杉山さんの工場の織り方がいいのはもちろん、それ以上のわからないなにかが働いているから、リピーターさんがつくのではないか』と言ってくださる方もいらっしゃるんですよ」と杉山氏
弊社の方針として「本当にみなさんに喜んでいただける商品を作る」ということを掲げています。どんな良い商品を作っても、喜んでいただけなかったらムダだと思うのです。メーカー、販売店、消費者。この三方にとって絶対によいものでなければならない。たとえ高額なものであっても、納得して買っていただいたのならいい。でも、値段に合っていなければダメです。高いものでも安いものでも、1~2回しか購入してもらえないものではダメ。私の考えでは3~4回と買ってもらえるものでなければならないと思っています。続かなければ意味がない。そんなものを作ることが大切だと思っています。たとえば、「杉山さんの商品から2年間浮気をしたけれども、やっぱり杉山さんのところの靴下がいいわ」と20足ぐらい買ってくださったりするお客さまがいらっしゃいます。高くても、また欲しいと思えるもの。そのひとつが「御足」という商品です。「御足」は最高級のエジプト綿ギザ45を使っており、着圧、つまり、血行を刺激する強弱編みによってフットケアも考慮しています。血流を下から上に押し上げる働きで、足の血行促進を助けます。肌触り、機能性という意味で最高級の商品で、一足1万円という価格にも関わらず、大変ご好評いただきましたが、現在、在庫がない状態です。それでも問い合わせの連絡が後を断ちません。あるとき、東京から「『御足』という商品はもうないんですか」と電話で問い合わせがありました。「糸がなくなってしまったのでやめたんです」と伝えると、「一年でも待ちますので、一足でいいので作ってもらえませんか?」と言われました。残り糸で編み、発送させていただくときにわかったのですが、それは、だれもが知っているとても有名な企業の代表の方でした。そんな問い合わせが個人・団体問わず、いくつもあります。「御足」のホームページはすでに存在していないのに、みなさん調べて連絡してくださるのです。
「御足」が誕生したのは2005年11月です。当初、プレマの中川社長に「最高の靴下を作ってください」と言われたことがきっかけでした。そこで選んだのが、最高級エジプト綿です。世界三大綿というのがあり、中国の新疆綿、アメリカのスーピマ綿、そしてエジプトのギザ綿です。当時、糸商の人に紹介してもらったなかに、このエジプトのギザ綿がありました。そのエジプト綿の45番目の畑で育った綿という意味で、ギザ45という綿があるのです。これがギザ綿のなかでも最高のクラスといわれています。スイスで丁寧に紡績されたものが日本にやってきて、そこから色を染めます。商品はホログラムのシールをつけて品質保証されています。このギザ45という綿が世界中でなくなってしまった。それで「御足」が生産できなくなったというのが現状です。
いま新しい「御足」を販売するために動いています。今度は、海島綿(シーアイランドコットン)と呼ばれる綿を使います。イギリス王室御用達の綿で、世界中で0.0001%しか生産されていない希少な綿です。海島綿はカシミヤのような柔らかさに加えて、高い耐久性があります。さわればすぐにわかりますが、本当にふわふわで、光沢もあり、しかも丈夫です。「奇跡の綿花」と言われており、油分があって、よりがしっかりしており、繊維が長いため切れにくい。さらに、そこに弊社独自の技術を施すことによって、長時間履いても疲れにくく、理想のフィット感を得られる商品になります。お待ちいただいているみなさまにお届けするのが、いまから楽しみです。
弊社の靴下は一足編みたてるのに、15~20分かかります。たくさんの工程を経ているため、とても手間がかかっています。新しい商品を作るには、まず、糸の質を読まなければなりません。靴下を編む機械は特注のもの。機械は細かく設定をしており、糸の細さが変わると一からすべて設定し直さなければならないのです。仮に今までと同じ糸であっても、どれだけ詰めるか、ゴムの入れ方、かかとの形など、仕上がりによって、やはり設定は変わります。そして、新しい商品を作るには、実際にできあがりを見て、検証していくしかありません。新しい「御足」のためにも、高額な海島綿を購入して、試作のためにこれまでどれだけつぶしてしまっているか(笑)。でも、どうしたら喜んでもらえるか、それだけを考えて作っています。どんなに良いものを作ったとしてもお客さんが喜ぶものでなければ意味がありません。
この年になって思うのは、やっぱり大切なのは「感謝して喜ぶこと」。若いころは、それがわかリませんでした。「儲けたい」より「ありがとう」と感じることが大切なんだなと感じています。こちらからどれだけアプローチをかけても、失敗ばかりしてきましたが、いまでは、お客さまや販売店さん、イベント会場など、向こうから声をかけてきてくださるのです。本当にありがたい話です。自分だけの努力ではどうにもならないような「もうだめだ」と思える場面でも、不思議なことに、そっと助けられた。そんなことがこれまでどれだけあったでしょうか。今となったら感謝しかありません。僕は、座右の銘として「毎日を一生懸命生きる」ということが一番だと思っています。だからムダなことはしません。人生はあっという間ですよ。