ベジタリアンやヴィーガンの食事、つまり肉や魚、乳製品、卵を食べない食生活では、栄養が不足するという意見があります。しかし、中身をよく見てみると一般的なアメリカ人の食生活(Standard American Diet:SAD)では警告が必要なほど栄養レベルが低い食事をしていることがわかります。
子どもを含めた多くのアメリカ人は果物と野菜の1日の摂取推奨量に程遠い食事をしています。CDC(米国疾病対策予防センター)が推奨する指標に比べて、野菜や果物の摂取量が不足しており、特に若年層の野菜不足は顕著です。この年代においては、1日に必要なエネルギーの割合のうち、果物と野菜から摂るエネルギーは12%程度で、しかもその半分はフライドポテトなどの加工品から摂っていることがわかっています。つまり、SADの食生活では1日の摂取カロリーのうち6%程しか未加工で健康的な植物性食品を摂れていないことになります。健康の維持増進に必須である、ビタミン、ミネラル、ファイトケミカル、食物繊維を摂るために欠くことができない野菜と果物の摂取状況だけを見てもSADはバランスがとれた栄養豊富な食生活とは言い難いことがわかります。
野菜と果物をたくさん食べることができたら、次は子どもたちが学び、成長し、遊ぶためにすぐに使えるエネルギーについて考えます。1日に摂取するエネルギーの大部分は複合炭水化物(ごはん・パン・麺)から摂取するように設定します。PBWF(プラントベースホールフード:植物性の食材をなるべく精製加工することなく食べる)の食事をしている大人の多くも摂取カロリーの約80%を複合炭水化物から摂っている場合が多いのですが、ここで重要なことは、この炭水化物が野菜、果物、豆類、全粒穀物のパンやパスタなどの未加工の植物性複合炭水化物であることです。摂取する炭水化物を精製された白い粉で作ったパン、麺、白米、チップスやクラッカーで摂った場合は、ビタミン、ミネラル、食物繊維、ファイトケミカルなどを捨て去り、カロリーだけが残った食品(エンプティーカロリー)となり、植物性であっても栄養が豊富な食べものとはいえません。
幼児のためのPBWFの栄養について生まれてから2歳までの一般的なタイムラインについては次号以降に詳しく記しますが、子どもが2歳になるころには大人と比べて特別な食事を準備する必要はなくなります。生まれてから2歳までは急速に成長する時期であるためカロリー密度が高い食事が必要ですので、油脂からのカロリーの摂取割合を多くする必要がありますが、油脂の割合とカロリー密度へ注意を払えば子どもたちは家族と同じ食事ができます。
未加工で未精製の植物性食品(野菜、果物、全粒穀物、豆、ナッツ、種子など)と適切に加工された植物性ミルクやシリアルなどを利用することにより成長期の子どもに必要な栄養を簡単に満たすことができます。
栄養に気を配って準備したPBWFの食事は、子どもたちを正常に成長させるために必要なエネルギーと栄養素を充足させることができます。繰り返しになりますが、健康な成長と発達のために、肉や魚、乳製品、卵などの動物性食品は必要ありません。
子どもたちは早い時期(母親の胎内にいるとき)から味覚と食の好みの形成が始まるため、正常な成長と発達、そして生涯を健康に過ごす食習慣を身につけるベースを作るためにも、大人は子どもに与える食べものに責任を持つ必要があります。PBWFの食事をする家庭は子どもたちに、色や香り、食感、季節など、豊かな経験を通して十分な栄養を摂取させることができます。成長期にあり、活動が盛んな幼い子どもたちには、早い段階からバラエティに富んだ植物性食品を食べさせるべきです。