私たち弁護士は、さまざまな社会領域において、法律業務に関わる活動をおこなっています。
多くの弁護士の中心的活動は、社会で生起するさまざまな法的紛争に代理人として関与することだと思いますが、これ以外にも、判断能力が十分でない方の財産管理などをおこなう業務や、一般企業内で法務に携わる職務、第三者委員会の委員として調査をする業務など多くの活動が存在します。
そうしたなか、最近注目されている弁護士の活動領域が、学校です。学校においては、いじめや体罰、学校事故など、多くの問題が発生し、それらの問題の多くは、教育問題であるだけでなく、法的問題としての側面も併有しています。
しかし、学校の教員や、教育委員会の職員は、法律の専門家ではないため、法的な観点をもって適切な判断をすることは簡単ではありません。
また、学校現場において、教員が、保護者などから過剰な要求を受け、その対応に苦慮したり、どこまで要求に応ずる必要があるかの判断に悩んだりする事態も発生します。
そこで、学校で生起するさまざまな問題に対して、法律の専門家である弁護士の関与が必要とされているのです。
スクールロイヤーの定義
こうした弁護士の学校法務への関わり方の一つとして実践が積み重ねられているのが、「スクールロイヤー」制度です。
スクールロイヤーは、現時点では社会に浸透した概念・役割ではないと思われるため、まずはその定義から紹介したいところです。しかし、現時点において、スクールロイヤーの概念・役割は流動的であり、発展段階にあることから、今のところ統一的な定義があるわけではありません。
そこで、さしあたり、「学校や教育委員会などに対して、学校におけるさまざまな問題について、法的観点から助言・支援をする弁護士」がスクールロイヤーであると考えていただくとイメージしやすいかと思います。
ただし、繰り返しになりますが、スクールロイヤーの概念は発展段階にあるため、今後、スクールロイヤーの概念や役割が変容していく可能性はあるでしょう。
日弁連の意見書(平成30年)
平成30年、日本弁護士連合会(日弁連)は、「『スクールロイヤー』の整備を求める意見書」を発表しました。
この意見書において、日弁連は、「学校で発生する様々な問題について、子どもの最善の利益を念頭に置きつつ、教育や福祉等の視点を取り入れながら、法的観点から継続的に学校に助言を行う弁護士」をスクールロイヤーと定義しました。そして、各都道府県・市町村の教育委員会や、国立・私立学校の設置者に対して、スクールロイヤーを活用する制度の構築・整備を求めるとともに、文科省に対して、スクールロイヤー制度の調査研究、その活用を推進するための法整備及び財政的措置を講ずることを求めました。
ここで重要なのは、日弁連が、スクールロイヤーを、「子どもの最善の利益を念頭に」置いて活動する弁護士であると定義したことです。
すなわち、ここで日弁連が想定しているスクールロイヤーは、単に学校や教育委員会のために活動する弁護士ではなく、あくまで「子どもの最善の利益」のために活動する弁護士なのです。
スクールロイヤーが、今後の実践の積み重ねにより定義や役割が流動するとしても、「子どもの最善の利益」という視点を失ってはならないと私は考えています。
次回以降、スクールロイヤーの在り方について、具体的に検討したいと思います。