前号では赤ちゃんがお腹にいるときから始まるお母さんから受ける食の影響と離乳に関わるタイムラインについて書きました。今号では離乳食の進め方についてもう少し詳しく書きます。
いつから離乳食を始めるか
アメリカ小児科学会は、生後6ヶ月まで完全母乳育児を奨励しています(日本小児科学会でも母乳育児を推奨)。完全母乳栄養をなるべく長くおこなうことは肥満を防ぎ免疫を向上させることがわかっています。また母乳はお母さんの常在菌を赤ちゃんに移行させ、赤ちゃんが常在菌叢を育てるための特殊な糖類を与える役割も担っています。しかし一方で、生後4ヶ月ごろの早期に離乳食を始めることにも利点があるとの研究結果があります。ピーナッツや小麦などアレルゲンになりやすい食品に早期に暴露することが将来のアレルギーに対するリスクを軽減するともいわれています。また生後5〜7ヶ月の間に味の好みを発達させる転換期があり、この時期の赤ちゃんに植物性の食品を食べさせることは一生涯健康的なPBWF(プラントベースホールフード:植物性の食材をなるべく精製加工することなく食べる)に対する味覚の発達を助けることになり得ます。
ほとんどの赤ちゃんは生後4〜6ヶ月ごろに離乳食を始める準備ができます。首が座り、赤ちゃん用の椅子に座ることができ、食べ物を手で掴むことができ、舌を突き出すのをやめ、大人の食べ物に興味を示すようになったら離乳食を開始する時期です。
どうやって進めるのか
赤ちゃんにとって離乳食の開始は大きな一歩です。新しい味と栄養に触れさせることにより赤ちゃんの発達を促すことができます。また赤ちゃんになにを食べさせるかを考えるのは周りの大人も健康的な食事をしているか見直す良い機会になります。赤ちゃんは常に家族の(食)習慣を真似ようとするので周りの大人の生活習慣を見直すことは重要です。
離乳食の開始は五感での経験です。赤ちゃんは新しい味、感触(食感)、香りを学びます。新しい食品に触れさせ、それを楽しませることも大切です。食べ物のすべてを楽しむようにしてあげてください。例えば、「これはアボカドです。緑色で、クリーミーで、滑りやすいわね。あぁ、おいしい!」などと声を掛けながら食事をしてください。初めのうちは食べる量はあまり重要ではありません。一日一食から始めてください。赤ちゃんは2、3口しか食べないかもしれませんが、それでいいのです。赤ちゃんがすることに従ってください。
慎重におこなわなければならないのは数日毎に一回、一つの食材を使った食べ物をあげることです。新しい食べ物を与えるごとに蕁麻疹や皮疹、顔面の腫脹、嘔吐、下痢、咳、喘鳴、呼吸困難、虚脱、顔面蒼白などアレルギーの兆候がないかを観察してください。食べ物を食べさせ始める順番についての科学的根拠は現在のところありません。
赤ちゃんが新しい食品に興味を示さなくても諦めないでください。子どもが新しい食べ物を受け入れるためには10〜12回試すことが必要だとの研究結果があります。ひと休みして、数日後にまたその食べ物を勧めてみてください。慣れ親しむことが好みへと繋がるので、笑顔で勧め続けてください。
初めはピューレ状のものをスプーンで与えますが、ピューレであっても哺乳瓶で食べ物を与えないようにします。赤ちゃんの年齢や発達状況に応じて柔らかくした食べ物を指でつまんで食べられるようになります。熟したバナナかそれよりも柔らかいものならばつぶしたりしなくても少量ずつなら安全に与えられるようになります。赤ちゃんが食べ物で遊んだり、吐き出したりするのはよくあることで、これは食べ物の柔らかさとは関係なく起こります。