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鍼療室からの伝言

鍼灸師の西下先生による陰陽や自然食。二十四節気など古来の智恵のお話

圭鍼灸院 院長 鍼灸師
マクロビオティック・カウンセラー

西下 圭一 (にしした けいいち)

新生児から高齢者まで、整形外科から内科まで。年齢や症状を問わないオールラウンドな治療スタイルは「駆け込み寺」と称され医療関係者やセラピストも多数来院。自身も生涯現役を目指すアスリートで動作解析・運動指導に定評がありプロ選手やトップアスリートに支持されている。

つなげれば、つながる

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「元気になったら、旅行がしたい」という患者さんがおられました。旅行というのは海外や、遠いところかと尋ねてみると、別に遠方でなくて日帰りでも良いらしい。だったら、今すぐにでもできるでしょうと、治療の帰り道、いつもとは逆方向の電車に乗ってみることを提案してみました。

その次の来院時にお話しくださったのは、逆方向の電車に乗ってこれまで見てなかった景色を見てから、一旦下車してカフェに寄って帰られたとのこと。それ以来、毎回帰られるときにはあえて各駅停車の普通電車に乗ってみたり、わざわざバスを乗り継いでみたりして、異なる手段・ルートを使うようになられた。普段のお出かけの際にも、これまでとはまったく異なる交通手段を使ってみるのが当たり前のようになり、移動する楽しみが増えたとのことでした。

私たちは「もしそうなったら……」と物事を仮定し、そうなれば状況が異なったものになると考えがちです。「AならばB」という条件は、外してみても良さそうです。元気になっていなくても、旅行をしなくても、旅の気分を味わうことはできる。そうこうしているうちに、気づけば楽しくて元気になっていた。そういうこともあるのです。

条件付けのクセ

だれしも先々のことを考えて「動けなくなったらどうしよう」と考えてしまうこともあるでしょう。実はそんなことを考えているうちは余裕があるもので、少なくとも現実に動けなくなっているわけではないのです。動けなくなったときのことを考えて不安で動かなければ、本当に動けなくなってしまいそうです。動かないよりも、動ける今を味わっておくことが大切です。

世の中には、人を不安にさせるメッセージが溢れています。「いつか動けなくなるときのために、考えておきましょう」と聞けば、本当にそんな気がしてしまいます。もちろん、いつか来るときのために情報を集めておいて、「もしもそのときがきたら、こうしよう」と、ある程度決めておくに越したことはありません。一方で「どうしよう……」と不安に煽られて、支配されてしまうのも考えもの。いつかはそうなるかもしれないけれど、それはそうなったときに考えよう、くらいの気持ちも必要でしょう。

これまでに「痩せたら、フルマラソンを走ってみたい」と、何人もの人から聞きました。このうち実際に走った人とはまだ出会っていません。一方で、「いつかフルマラソンを走りたい」と言っていて、運動経験もなかったのに実際に走った人からの話は聞きます。「痩せたら……」という「AならばB」という条件付きで考えていたのか、「いつかはB」と単純に肯定的に見ていたのかの違いは、大きな差を生み出すようです。

条件を付けるクセがついていては、自分の人生にも条件を付けてしまいかねません。それよりも「いつかは……」と前向きな言葉を発するクセをつけていきたいものです。

大きな道へつながる

禅の言葉に、「大道在目前」とあります。世の中の真理は手の届かないところにあるのではなく、いつも目の前のいたるところにあるということ。そのとき、そこでなすべきことなのかどうかが大切なのであって、なすべきときに、なすべきことをやっていれば道を誤ることはないということになります。

いつか大きな道に乗ったならばと考えてしまうところで、一歩立ち止まって考えてみる。大きな道が突然やってくることなどはなく、いま立っているこの小さな道が、やがて大きな道へとつながって、その先へ導かれていくと知ることでしょう。

つなげれば、つながる。自分の意志ひとつだと信じていきたいものです。

- 鍼療室からの伝言 - 2026年7月発刊 vol.226

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