木の切り株を見ると、年輪がきれいな同心円ではなく、片側だけ広くなっているものがあります。これは傾斜地で育った木や、一方向から強い風を受け続けた木に見られる特徴です。木は成長の過程で力のかかり方に偏りが生じると、左右の成長速度を変えて一方を強化し、倒れないように自らの姿を調整します。さらに、枝を伸ばす位置や角度、根の張り方、幹の内部に補強組織(あて木)をつくるなど、さまざまな仕組みで環境に適応しています。
バナナにも重力に応じて姿勢や内部構造を整える仕組みがあります。高さは4メートルを超えることもありますが、バナナは木ではなく草に分類され、「幹」に見える部分は木質ではありません。葉の付け根である葉鞘が幾重にも重なった「偽茎」です。偽茎の内部には柔らかい組織が詰まっていますが、単なるスポンジ状ではありません。縦横に細かな隔壁が走り、段ボール箱の仕切り板のような立体的なハニカム構造をつくることで、巨大な偽茎を支えています。特に外側や下側ほど強度が高くなるよう工夫されています。
バナナは地下茎の脇から次々と子株を出して増えていきます。しかし、古い株が枯れて更新が追いつかないと、新しい株は十分なスペースを確保できず、外側へ斜めに伸びることがあります。このような場合、偽茎内部では葉鞘ごとに隔壁の密度や厚みが変化し、横断面にも左右の偏りが現れることがあります。これは、傾いた方向にかかる力を受け止めるために、必要な側をより強くする工夫で、斜めに育っても倒れにくくする役割を果たしています。
その仕組みの始まりは、偽茎の基部にあるデンプン粒が重力の方向を感知することです。その情報をもとに、植物ホルモンが偏って分布し、葉鞘の成長速度を変化させます。その積み重ねで偽茎内部の強度分布や姿勢が少しずつ修正されます。また地中の根や地下茎の成長方向も環境に適応した偏りを生み出しており、バナナは地上と地下の両方で重力応答し、姿勢を維持しています。
木とバナナは異なる体のつくりを持ちながら、どちらも重力を感じ取り、自らの形を調整して倒れないように生きる、巧妙な仕組みを備えているのです。
斜めに傾いたバナナの茎
斜めに傾いたバナナの茎
