「変わりたい」「変えたい」と思うとき、変わりつつあるという実感や変えていこうという意欲が続いているなら、自然な変化が起きているといえます。望むようには変わらない、変えられないという行き詰まり感がある場合、これから述べる試みが、自然な変化を生み出すきっかけになります。
心の状態を変えたい
プラス思考や穏やかな気持ちでいることを心がけ、自然に切り替えや方向づけができているなら問題ないのですが、マイナス思考や心地悪い感情を消すこと、取り除くことへの拘りは、自然な変化を妨げます。心のなかに繰り返し浮かぶ否定的な思いや不快な感情を消したいという気持ちがあるでしょうか。そのような思考や感情を、掴んで取り除こうとする、心の中から押し出そうとするなど、力んでいるような感覚があるかもしれません。その感覚を、まずそのまま許容し容認してみます。
そして、握り締めた拳を緩めるように、ふっと力を抜いてみましょう。イメージや意図だけでおこなってもいいし、実際に手でそのような動作をしてみても構いません。「今この瞬間だけでも」というつもりでおこなうのがコツです。何度か繰り返し、いくらか緩んだら同じことをまた意識してみます。再び自覚される拘りがあれば、それを認めてから放します。
自分自身に対する寛容さ、全てを包み込む受容性などが自覚され始めたら、それは解放が起きている兆候です。変えたいという拘りを一旦手放すことは、変化をあきらめることではなく、むしろ自然な変化をもたらします。この状態になると、不快な感情や思考がまだあっても、それらを許容しつつも囚われてはいない状態に移行しています。これが「手放す」という言葉が指している状態です。自分の状態をコントロールしたい気持ちも手放しているのです。
身体の状態を変えたい
感情解放が身体の治癒に直接繋がるわけではありませんが、ストレス軽減に役立ちます。身体に問題があるとき、痛みなど不快な感覚があるときには、それを治したい、変えたいという気持ちになるのは当然ですが、それに拘ると不快感は強まります。この場合も「心の状態を変えたい」の項で前述したのと同じ手順が使えます。変えたい気持ちを一旦手放したら、身体をありのまま受容してみることもお勧めです。
生命力の働き全体を認める視点を持つと、問題や症状に囚われていた状態から抜け出せます。
状況の変化を望むとき
現状から抜け出したい、望みを実現したい、などの場合にも、同じ試みが役立ちます。今よりも、もっと早く、大きく、完全な変化がなければ不十分だ、という気持ちに囚われているときは、まだ変わっていないところに注意が限定されがちです。望みどおりにならないフラストレーションや焦りが生まれます。それが解放されると、少しずつでも変わりつつあるところや、すぐに変わらなくても大丈夫なところに目が向くようになります。今の自分が変化に向けてできることにフォーカスしながら、長期的な視野で取り組むことが可能になります。
行動を意識すると抵抗を感じる場合は先月号で述べた手順が役立ちます。
静穏の祈り
変えたい気持ちを適度に手放す習慣は、次の祈りの言葉に示されている心境に近づく手立てになるでしょう。「神よ、変えられないものを受け入れる静穏と、変えられるものを変える勇気と、それらを識別する知恵を、私にお与えください。―ラインホルド・ニーバー」
セドナメソッド認定コーチ
安藤 理(あんどう おさむ)
制限的な感情を解放し心の自由を生み出す手法の翻訳書「人生を変える一番シンプルな方法―セドナメソッド」監修者。
日本で唯一、米国セドナ・トレーニング・アソシエイツから認定されたセドナメソッド・コーチ。
電話等での個人セッション、東京と関西でセミナーやセッションを実施している。
http://andoo.info