先月はズッキーニの魅力について書きましたが、今月はトマトについてのお話です。トマトも、もしかしたらズッキーニと同じぐらい、その良さが伝わってない野菜なのではないか、と思います。 まず、「トマトはどうやって召し上がっていますか?」の問いに、「切ってそのまま」と答える方がほとんどです。 もったいない! 切ってそのまま食べるだけなんて!というのがトマトなのです。
イタリアはトマト栽培の生育期の気候が暑く乾燥しているので、露地で生産されるものが殆どです。支柱など立てず、地生えのトマトが多く、南イタリアに行くと広い畑(地面)が真っ赤という風景を見ることができます。雨避けのためにビニールハウスで生育させることが殆どの日本と比べても、国により気候の違いで栽培環境が大きく変わるのを、イタリアのトマト栽培を見て感じました。
たとえていうなら味噌
さてトマトが料理にどのように役に立つか、これは切って食べるだけの方からは想像できないことだと思いますが、トマトは加熱調理こそ本領を発揮します。
西洋料理は肉や骨からとった出汁を使うのが基本、と思われている方が多いですが、南イタリアの家庭料理ではクリスマスなどのご馳走以外は、出汁のようなものは使いません。
素材(野菜や肉・魚・穀類など)とオリーブオイルと塩だけで、味つけのための調味料というものが存在しません。その代わり、トマトは旨みがとても強いので「生」をそのまま、もしくはトマトを水煮やピュレ状に加工し瓶詰したものを多用します。シンプルな野菜のスープにトマトを少々加えて煮込めば出汁不要で味がでます。また、アクアパッツァという水だけで魚を煮る料理がありますが、これも生のミニトマトの旨みが必須です。
トマトは、例えていうなら味噌のように旨みを補足するもの・アクセントのようなものです。そして、必ずオリーブオイルを加え、加熱調理することで素材同士の相乗効果で料理をおいしくさせます。トマトを加熱した新しいおいしさも、ぜひ、実感していただきたいと思います。
油脂といっしょに食べると栄養素の吸収率が高まる
また、トマトは油脂と一緒に食べることで、中に含まれる栄養素の身体への吸収率が高まるとも言われています。そのまま切っただけのフレッシュサラダも、良質のオリーブオイルを添えてどうぞ。切っただけのそのままより、断然おいしくなります。
おすすめの「トマトの加熱クイック料理」をご紹介します。
【フレッシュトマトのパスタソース】
ミニトマトを手でぎゅっとつぶします。フライパンで、にんにくとオリーブオイルを低温で熱し、香りが出たらミニトマトの果肉だけを入れ、塩を同時に入れて中火で炒めます。オイルと馴染んできたら、果汁を加え3分ほど煮ればOK。お好みのパスタをからめてできあがり。
パスタに合わせる前のソースを味わってみてください。トマトがオリーブオイルと一緒に加熱され、旨みが二倍にも三倍にも濃縮されているはずです。
【トマトのシンプルサラダ】
トマトのシンプルサラダはちょっとしたことが美味しくする秘訣。完熟トマトをスライス、または、くし切りして、切った面にかかるように、オリーブオイルをたっぷりかけ、塩を少々ふりかけてから冷蔵庫へ。
食べる直前に冷蔵庫から出してお召し上がりください。ご家族の方の歓声があがること間違いありません。
アサクラ 代表
朝倉 玲子
(あさくら れいこ)
一般企業、有機農業に携わった後、イタリアに滞在し有機農家民宿やミシュラン三ツ星レストランにて料理修業。オリーブオイル鑑定技能講座で学び、オリーブオイルの素晴らしさに開眼。本物のシングルエステートを探し、エキストラバージン・オルチョサンニータと出会い、故郷会津若松に戻り輸入開始。オリーブオイルの良さと使い方を伝えている。
http://www.orcio.jp