イタリアでは9月半ばからブドウの収穫が始まり、終わると10月からオリーブの収穫が始まります。一年で一番忙しい時期に入るのです。
「オリーブオイル」とは、オリーブという果実(フルーツ)を種ごとつぶして搾汁し、その汁のなかに含まれる油分だけを取り出したもののことを指します。
植物性油脂のほとんどが、ごまや菜種などの「種子」を原料にして、加熱処理しています。
炒ったりすることにより、香ばしい風味が加わった油ともいえます。
種子は水分含有量が少なく保存性が高いので、必要な時に応じて処理し、搾油することができます。
ちなみに精製した種子オイルは、その工程において化学処理しており、色や味・風味を取り除くので無味無臭です。
それに対して、非加熱のオリーブオイルはオリーブ果実そのものの油性のジュースともいえ、その風味と味わいは、生の果実のもつ特性をダイレクトに反映したものです。
果実であるオリーブの収穫から搾油までの時間と処理の仕方により、オイルのクオリティが左右されます。
〝フレッシュな油性ジュース〟であるオリーブオイルには、こういった事情からも、品質を決めるための「官能検査」というものがあります。
ゆえに、国際オリーブオイル協会に加盟している国(EUなど)は、できたオリーブオイルを生産者自身が等級を決めることができません。
分析所でオイルを検査し、数値を測り、人が実際に味わって品質を評価してから、最終的に等級分けをします。
酸度などの数値だけでは本当にいい油かどうかは決められないのです。
生の果実を搾油するため、生のオリーブ果実が新鮮かどうか、どの程度劣化しているのか、農薬などの影響、搾油環境が衛生的であるかなどを踏まえ、実際の「風味」「味」を重視するということです。
分析所の官能検査員は、優れた嗅覚と舌をもち、微妙な優劣を判断します。
品種、栽培された気候風土、また収穫方法、収穫から搾油までの時間など、すべてのプロセスが終結した結果、オリーブオイルの風味と味ができあがるのです。
オリーブオイルの価値は調理してこそわかる
近年、その風味と味わいの結果だけを評価し、優劣をつける傾向があります。
オリーブオイルに関わり20年になりますが、その手法には疑問を抱いています。
もちろん適地適作して、適期に速やかに収穫されたオイルはどれもおいしく、素晴らしい香りを持ちます。
しかし、人が生まれたときから、それぞれの顔や身体、見た目が違うように、風味と味わいだけで優劣やプレミアをつけるのはどうかと思うのです。
風味や味わいはあくまでも個性です。
それよりも適正に作られた上質なものを何度も味わうこと。
生そのままはもちろんですが、加熱処理し、料理をすることで、その味わいを理解できるようになります。
上質なオリーブオイルはよほどの高温でなければ、加熱しても変質が少ないのです。
野菜やそのほかの材料を料理して、そのオイルがどれだけ素材の味を引き立てているのかを実感して、経験値を高めてゆくことで理解が深まるはずです。
私は環境になるべく負荷のない栽培方法とオイルづくりへの愛情がある生産者を応援しています。
産地や品種により個性はさまざまです。
お好きな風味や味わいと共に、それを作る人に思いを馳せることができるよう、生産地や生産者の情報発信を積極的にしています。
食べ物は「誰がどうやって作るか」が重要だと思うからです。