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オリーブワールドへようこそ!

オリーブに関わって20 年。日本人目線で日本人のためのオリーブについてお伝えします

アサクラ 代表

朝倉 玲子 (あさくら れいこ)

一般企業、有機農業に携わった後、イタリアに滞在し有機農家民宿やミシュラン三ツ星
レストランにて料理修業。オリーブオイル鑑定技能講座で学び、オリーブオイルの素晴
らしさに開眼。本物のシングルエステートを探し、エキストラバージン・オルチョサンニータ
と出会い、故郷会津若松に戻り輸入開始。オリーブオイルの良さと使い方を伝えている。
http://www.orcio.jp

イタリアの発酵調味料

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今月はイタリア料理とはあまり縁のなさそうな魚醤についてです。魚醤は塩漬けにした魚を発酵させて作る液体調味料で、しょっぱくて独特の発酵臭があります。あまり馴染みのない魚醤ですが、東南アジアのヌクマムやナンプラーなどは、アジアン料理が一般的になりつつあるなかで、ご存知の方も多いでしょう。

日本にも魚醤はあります。ハタハタを原料とした秋田の「しょっつる」やイカなどを原料とした石川の「いしる」です。ハタハタを原料とした魚醤は、なんと鎌倉時代には使われていたそうですが、現在の私たちが使っている大豆と麹で作る醤油や味噌の登場で次第に使われなくなっていったようです。時間の経過は文化の変化を伴います。食べるもの、食材の変化は世の常と、長い歴史を振り返ると思います。

イタリアの魚醤「ガルム」

実はイタリアにも魚醤があります。古代ローマ時代にはポピュラーな調味料として使われていた「ガルム」という魚醤です。現在、日本や東南アジアで見られる魚醤は、塩漬けした魚を発酵させたあと、絞って濾したものです。一方、古代ローマ時代のガルムは、塩漬けした魚を発酵させてドロドロになったそのままを、料理に加えたり、直接食べたりしていたそうです。

私がガルムの存在を知ったのは、今のように日本とイタリアを行き来するようになるずっと前のこと。何かの読みものに、古代ローマ時代の料理のレシピのなかには「GARUM」と記載されたものが多く残っているとありました。その読みものは、「それは一体どんなものであったのだろう」という結末で終わっていました。それを読んで、私はイタリアにそのようなものがあったとはまったく想像できませんでした。また、どのようにしてイタリア食材と組み合わせていたのか見当もつきませんでした。しかし、今から5〜6年前、なんと私の目の前にガルムが現れたのです。

それは弊社の人気オリーブオイル「オルチョサンニータ」で漬けるアンチョビの商品開発のため、南イタリア・アマルフィ海岸沿いにあるアンチョビ工場を初めて訪問したときのことです。「おもしろいものがあるよ」とオルチョサンニータの生産者のジョバンナさんが、ガルムのことを教えてくれました。しかし、それは古代ローマのドロドロしたものではなく、濾した茶色のクリアな美しいエキスでした。

ジョバンナさんによると、ナポリ周辺を中心に自家製のガルムを作っている家庭は多く、ナポリ出身のジョバンナさんもカタクチイワシを塩で漬け込み、その発酵液の上澄みをガルムとして料理に使っていたそうです。そして、「ガルムはなんにでも使えるのよ。魚料理にも野菜にも。ほんのちょっと加えるだけで旨みを簡単に足すことができるのよ」とのこと。いわゆる濃縮だしと同じ要領で使うようです。私はガルムがまったく廃れたものではなかったことに驚きました。

魚のエキスというと身構える方も多いと思いますが、湿気の少ない南イタリアで長期発酵して作ったガルムは、香りの柔らかさが特徴で、料理に魚臭さを残さず、食材の持ち味の邪魔をしません。また、長時間煮込んだり炒めたりして旨みを濃縮する料理も、ガルムを加えれば短時間で調理できます。食材を問わず、ガルムをちょっと足すと味が何重にも広がり、おいしくなります。

魚の持ち味を発酵という時間により旨みとして濃縮したエキスのガルム。こんなにおいしいものを古代ローマ人が食べていたというのもおもしろく、当時は一体どんなものを食べていたのか、もっと知りたい衝動にかられるところです。

イタリアの魚醤「ガルム」

アンチョビを発酵させエキス部分だけを取り出した「ガルム」 強い旨みと独特な風味を持ち「旨み調味料」としてご使用頂けます。

アサクラ ガルム(醤)を見てみる>>

イタリアの発酵調味料

- オリーブワールドへようこそ! - 2019年2月発刊 vol.137

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